安保法制における存立危機事態 (2)

存立危機事態においてはまた事態対処法において以下のように規定される。

(武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処に関する基本理念)
第三条 武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処においては、国 、地方公共団体及び指定公共機関が、国民の協力を得つつ、相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければならない。
(略)
4 存立危機事態においては、存立危機武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。ただし、存立危機武力攻撃を排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。
(略)
(国の責務)
第四条 国は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため、武力攻撃事態等及び存立危機事態において、我が国を防衛し、国土並びに国民の生命、身体及び財産を保護する固有の使命を有することから、前条の基本理念にのっとり、組織及び機能の全てを挙げて、武力攻撃事態等及び存立危機事態に対処するとともに、国全体として万全の措置が講じられるようにする責務を有する。

というように既存の武力攻撃事態に合わせて存立危機事態でも武力行使ができることになっているとともに、存立危機事態を排除することが国の責務となっている。しかしこれまでの安全保障政策において自衛隊武力行使については日本の領土領海での活動を前提にした装備しか持っていない。たとえば米艦にミサイル攻撃があって次に日本が狙われる蓋然性が高ければ「存立危機事態」が成立することは考えられるが、敵のミサイル基地を攻撃するだけの装備は持っていないのでその時にミサイル攻撃を排除することはできない。ミサイルが飛んで来れば日本への武力攻撃がなされて武力攻撃事態が成立するので迎撃できるが、我が国への攻撃がなされていない状況では手が出せないという矛盾した状況が存立危機事態では生じうる。
今回の安保法制は本来は他の国への助太刀である「集団的自衛権」を自衛のための「限定された集団的自衛権」として取り入れようとしたために、武力の行使を今までより狭く解釈するとか兵站を「後方支援」と称して「武力の一体化」とみなされることを避けたためにさまざまな矛盾が生じてしまっている欠陥法案でしかない。
そもそもイラク特措法人道支援活動としてサマワ自衛隊派遣をしたことが合憲だったのかどうか。衆議院での審議の中で共産党サマワに携行した武器を明らかにしたこと、また結局は委員会審議のあとで明らかになったがサマワでの活動報告書でかなり危険な状況が発生したことなどをきちんと総括しないまま自衛隊の活動をさらに広げようとしてることが大きな問題である。

安保法制における存立危機事態

今回の安保法制で問題になっているのが事態対処法で規定される「存立危機事態」である。

(定義)
第二条 この法律に(第一号に掲げる用語にあっては、第四号及び第八号ハ(1)を除く。)おいて、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(略)
  存立危機事態 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態をいう。

とされており、「新三要件」のうち「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し」た場合ということで「我が国の存立が脅かされ」ていることに対して「我が国を守るための」集団的自衛権を発動できるという事態である。すなわち日本の領土領海への直接の武力行使が行われていないが、それと同等の切迫した事態であるということになる。
この時には

八 対処措置 第九条第一項の対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が法律の規定に基づいて実施する次に掲げる措置をいう。
 イ 武力攻撃事態等を終結させるためにその推移に応じて実施する次に掲げる措置
 (2) (1)に掲げる自衛隊の行動、アメリカ合衆国の軍隊が実施する日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下「日米安保条約」という。)に従って武力攻撃を排除するために必要な行動及びその他の外国の軍隊が実施する自衛隊と協力して武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設又は役務の提供その他の措置
ハ 存立危機事態を終結させるためにその推移に応じて実施する次に掲げる措置
 (1) 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃であって、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があ
るもの(以下「存立危機武力攻撃」という。)を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動
 (2) (1)に掲げる自衛隊の行動及び外国の軍隊が実施する自衛隊と協力して存立危機武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設又は役務の提供その他の措置

というように外国軍隊への「後方支援」を行えると規定されている。
与党側はそのような事態の想定としてホルムズ海峡での機雷の敷設や日本近海での米国イージス艦への攻撃を挙げていた。またホルムズ海峡での機雷敷設に対しては停戦を前提とせずに例外的に掃海行為ができるとまでしていた。


○高村委員 一般に海外派兵は行わない、そしてペルシャ湾の機雷掃海は例外的に認められる場合がある、こういうふうに総理はおっしゃった。中谷防衛大臣は、新三要件に当たればできることがあると。お二人とも当たり前のことを言っているので、二人がおっしゃっていることは全く矛盾しない。
 それで、もしかしたら一般の方がちょっと心配するかもしれないのは、海外派兵の例外、三要件に当たる場合が中東や何かでそんなにあるかといったら、私、いろいろ考えてみたんだけれども、総理が挙げているペルシャ湾の機雷掃海ぐらいが限界事例であります。そのほかに中東で、新三要件に当たる、特に肝の部分の、国民の生命、自由、幸福追求の権利を根底から覆す明白な危険がある場合に当たる場合があるかといったら、私、なかなか想定できないんですよね。
 ですから、当たる場合は例外であるということで、絶対ないと断言することはできないにしても、まあほとんどない、現実の問題としてほかに中東あたりで例外は想定できないと私は思っているんですが、総理のお考えをお伺いしたいと思います。
安倍内閣総理大臣 三要件に当てはまればそれは法理上あり得るということも今まで申し上げてきたわけでございますが、しかし、新三要件、そして第三要件の必要最小限度の実力行使にとどまるべきことということの中、これは非常に厳しいですから、この中において想定し得ることについては、ホルムズが機雷封鎖された際に、かつこれが相当甚大になっていけば、これはまず受動的、制限的な外形上の武力の行使にはなりますけれども、いわば事実上戦闘行為が行われていないところで受動的、制限的に行う、危険物を除去していくという行為でありますが、国際法的には武力の行使になる。これは最小限度の中であろう。一般にの外になる。しかし、第一要件に当てはまるかどうかというのは、その事態が起こらなければ総合的な判断というのはできないわけであります。
 そこで、これぐらい厳しいわけでありますし、今、第一要件として挙げられた、第三要件をクリアするものも恐らくそうないんだろうと思いますが、特に第一要件においては、我が国の存立が脅かされ、そして国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険ということでありますから、これは現在、ほかの例というのは念頭にはありません。
ホルムズ海峡に機雷が敷設されて原油を運ぶタンカーが通過できなくなることで原油の輸入が滞って国民生活に影響が出るという理屈である。与党側は特定の国が機雷敷設することは想定せず一般論だと言うが、ホルムズ海峡はイランとオマーンの領海でありこのような議論を行うことでイラン側から「ホルムズ海峡は自分たちも通商に使っている航路であって機雷を自ら敷設することはありえない」と外交ルートで不快感を伝えられてもいる。またここ数年でイランの核開発で欧米の経済制裁が行われており対立もあったが、ちょうどこのタイミングで話し合いがまとまり解決に向かっている。そもそもホルムズ海峡を原油の通商ルートで使っているのは日本だけではなく、日本が原油を求めて停戦前に機雷掃海をするという「武力行使」をするのは70年前の太平洋戦争の再現だという批判が強くおこった。
また米国の艦船への攻撃で存立危機事態になりうるというのは日本近海で単独でミサイル防衛に当たっているイージス艦が攻撃を受けた場合にミサイル防衛システムに穴が生じることで日本がミサイルの標的になりうる。それを防ぐためにイージス艦自衛隊が防御知る必要があるという理屈である。しかしそもそも米国のイージス艦が無防備な単独で行動することはありえないし、イージス艦が一隻だけ機能しなくなってもミサイル防衛システムに影響が起こるような脆弱なものではない。
結局「存立危機事態」に対するきちんとした立法事実がまったく示されていないこと、「存立危機事態」を認定する外形的基準が示されないまま「総合的に判断する」という答弁しかしておらず時の内閣に判断を全て任せるような法制となってしまっている。

自衛権発動の三要件


○大久保委員 ただいまの団体旅行の場合を例にとります。相手の国の商船が花見旅行と称して敵性ある人間を積んでやつて来ておる。それがかりに日本海を渡つておる、こういう場合に海上自衛隊は哨戒をしておつて、その的確なる情報に基いておる場合においてその商船を捜査することはできませんか。
○佐藤(達)政府委員 私どもの考えておるいわゆる自衛行動と申しますか、自衛権の限界というものにつきましては、たびたび述べておりますように、急迫不正の侵害、すなわち現実的な侵害があることそれを排除するために他に手段がないということと、しかして必要最小限度それを防禦するために必要な方法をとるという、三つの原則を厳格なる自衛権の行使の条件と考えておるわけであります。その方の基準から照し合せて今のお尋ねの場合を考えてみますと、その場合にただちに実力行動がとれるという結論にはなりにくいように考えます。

○黒柳明君 私は、公明党を代表しまして、防衛二法案に対し、総理、また関係大臣に質問したいと思います。
 午前中も指摘がありましたように、本来この審議は、委員会において審議を尽くされるべき性質のものであります。本来ならば、私と総理がこう面と向かって対陣して、さながら厳流島の武蔵、小次郎の一騎打ちを見るごとく、防衛論争で火花を散らす、これが本来の私のこれから質問する趣旨であります。残念ながら、この本会議で一方通行の質問をせざるを得ない、こういうわけでありますが、ひとつ総理も、私、本会議で総理とじっくり、委員会で総理とじっくり質問しているようなつもりでこまかい質問をしたいと思いますので、その点、御留意いただきたいと思います。
 本防衛二法案は、昭和四十六年、四十七年、過去二度も廃案のうき目を見ている事実は、一体何を物語っているのでしょうか。一国の防衛に関して、四次防、五次防と、とめどない政府の詭弁とごまかしによる法の拡大解釈により、軍隊としての自衛隊及び防衛力増強計画等の既成事実をつくり、その正当性を一方的に国民に押しつけるなどは、まさに、独裁政権による国民不在の防衛政策であると断ぜざるを得ないのであります。総理、そして各大臣は、国民がいま何を政府に期待しているのか、御存じでしょうか。歴代内閣の失政による住宅難、物価高、交通問題、公害、社会保障の立ちおくれ等、国民は一日も早い内政問題の解決を待っているのであります。それにもかかわらず、防衛予算の先取りを行なうなど、国民無視もはなはだしい、まことに嘆かわしい事態であります。本来ならば、先ほど申しましたように、本法案は委員会において徹底した審議を尽くすべきであります。しかし、きょうは残念ながら総理と同方向を――仲がよくて同方向を向いているわけじゃありません。同一線上で質問しなければならない。しかし、私はここに七十五のこまかい質問を用意しました。政府の答弁は、国民の納得のいくように、懇切丁寧に、かつまた具体的な誠意のある答弁をまずお願いして、私の質問に入りたいと思います。
 まず、自衛隊の防衛出動、治安出動、災害出動等についてお尋ねいたしたいと思います。
 一九六九年のいわゆる佐藤・ニクソン共同声明において、台湾、朝鮮の平和と安全はわが国の平和と安全にとって不可分のものであるとし、それ以後、たびたび国会においてこのことは確認されておりますが、これは、台湾、朝鮮地域において紛争が発生した場合に、自衛隊の出動もあるということを意味するものかどうか、まずお尋ねいたしたい。また、かつて法制局長官は、朝鮮で紛争が起きた場合、在留日本人の生命財産の保護のみを目的として自衛隊が出動する場合、相手国すなわち朝鮮側政府の要請がありさえすれば問題ないとの見解を披瀝していますが、それでは、万が一、朝鮮半島において不幸な事態が発生した際には、日本の権益保護という意味も兼ねて自衛隊の出動は可能と考えられるのかどうか、お尋ねいたします。
 また、自衛隊の防衛出動に関しては、自衛隊法七十六条で規定されております。そして同条三項では、防衛出動を規制する規定があります。この七十六条第三項と日米安保条約第五条の関係について、政府はどのようにお考えになっているのか。すなわち、自衛隊法第七十六条第三項は、安保条約第五条の上位規範と考えられるべきではないでしょうか。安保条約を優先するならば、当然安保の存在によって、平和日本が欲せざる戦争に巻き込まれることになり、わが党がかねてから懸念していたことが現実のものになると思うのでありますが、政府はどのような見解をとっているかお尋ねいたします。
 また、第四次防計画には「防衛の構想」という項があります。その中にはこううたわれております。「万一、侵略が発生した場合には、間接侵略および小規模の直接侵略に対してはわが国が独力で、それ以上の規模の武力侵略に対しては米国の協力を得て、これを排除する」旨が述べられております。そこで、ここにいう間接侵略とは、一体いかなる状態をいうのか。また、どういう角度からこれを判断するのか。政府のいう間接侵略の具体的な内容を、その規模、質など、基準もあわせて御説明願いたいと思います。
 次に、間接侵略と治安出動をしなければならないような状態とでは、どう違うのか。間接侵略に関して自衛隊が出動するような事態においては、防衛出動という名目のもとに出動するのかどうかもあわせて明らかにしていただきたいと思います。
 さらに、自衛隊法におきましては、自衛隊の任務として防衛出動、災害出動、そして治安出動等が規定されているのでありますが、自衛隊が治安出動をするような事態はどのような場合なのか。これもまたその基準を明確にして御説明いただきたいと思います。
 さらに、そのような事態においては、警察との関連、指揮系統はどうなるのか。その際の自衛隊の装備はどういうことになるのか、具体的に示していただきたいと思います。
 また、自衛隊が災害出動以外、すなわち防衛出動や治安出動の場合は、いわば非常時というべきときであります。その際、非常時立法というような点はどうなるのでしょうか。自衛隊法でこれらの任務がはっきりしている以上、当然こうした事態も考えられると思うのでありますが、伺っておきたいと思います。
 さらに、自衛隊法第七十八条、「命令による治安出動」についての第一項では、「間接侵略その他の緊急事態」ということが書かれているのでありますが、「その他の緊急事態」というのはどのような状態をさすのか、お尋ねいたします。
 これまでの世論調査によりますと、国民は自衛隊の災害出動を高く、ある意味では評価しております。ところが最近では、災害出動等に名をかりて防衛訓練を行ない、国民のひんしゅくを買っている面もあり、阿賀野川における渡河訓練はそのよい一例であります。災害訓練を名目とした軍事訓練は、当然国民の目をごまかすものといわざるを得ないのであります。災害訓練と軍事訓練の関係においては明確な一線をつけるべきであると思いますが、この点どうお考えになっているか明らかにしていただきたい。
 また政府は、自衛隊地震災害時における実際の行動計画を国会に提出するといっておりますが、その時期はいつごろになるのか、あわせて承っておきたいと思います。
 次に、防衛計画についてお尋ねいたします。
 三次防の大綱にはこのように述べられております。「有事の際すみやかに事態に対処し、行動能力を継続的に維持しうるよう弾薬の確保等後方体制の充実を図る。」こうであります。これは有事即応体制をとっていることをうたっておりますが、四次防においてもこの体制を維持していくことには変わりないのか、お伺いいたします。
 また、四次防計画の中には、「小規模の直接侵略」ということで、これに対しては、先ほども申しましたように、独力で対処すると、こうなっておりますが、「小規模の直接侵略」とはどの程度の内容、規模を想定しているのか。さらには、このような直接侵略に対して、現在の自衛隊はどの程度に対応できることを目標にしているのか、お尋ねいたします。たとえば、ガソリン、弾薬、食糧等については、現時点においては何日間たえ得るだけのものがあるのかということも、あわせてお答えいただきたいと思います。
 次に、前佐藤内閣は、三次防段階におきまして、自衛隊を「抑止力として有効な防衛力」、こういう目標に沿って強化拡充してきたことは事実でありますが、政府は、現在の自衛隊では、侵略に対して抑止力どころか、自衛の力にもなり得ないという発言を行なっております。それでは三次防で言った目標とは矛盾があると思いますが、いかがでしょうか。また、この抑止力について政府はどのような見解をお持ちになっているのか、明快に御答弁をいただきたいと思います。
 また、従来政府は、通常兵器による局地戦に対処するということを明言しております。これは四次防計画中の、いま申しました「小規模の直接侵略」これと異なるものか、あるいは同意義のものか。もし異なるものであれば、その差異はどのようなものかを明らかにしていただきたいと思います。
 また、政府は、昨年十月、四次防を決定しましたが、今後将来の防衛計画についてどのような考えを持っているのか、明らかにしていただきたい。たとえば五次防、六次防についてはどのように考えているのか、また、欠員のはなはだしい自衛隊員の定員増については、今後どのような構想を持っているか等について御説明いただきたいと思います。
 特に、自衛官の募集が限界を迎えている今日、残された最後の手段は徴兵制以外にはないということもささやかれていることは事実であります。かつて法制局長官は、徴兵制について、「平時に国民を強制的に徴し、軍隊に編成して訓練し、戦時に備えるものが徴兵制であるとすれば、憲法の許容するところではない」としております。このことは、逆に有事徴兵制は違憲でないということになるのではないでしょうか。政府の徴兵制に対する見解を承りたいと思います。
 次に、沖繩自衛隊の実態、また、自衛隊の余剰兵器の問題についてお尋ねいたします。
 現在、沖繩に派遣されている自衛隊の実態について、隊員数、装備などについて、陸・海・空別に明らかにしていただきたい。さらに、沖繩への自衛隊の今後の増加計画についても、あわせて具体的に御答弁をお願いいたします。
 次に、自衛官の充足問題について、現在の充足状況を陸・海・空に分けて説明していただきたい。今日の状況は、自衛官の充足はきわめて困難であると聞いているのでありますが、これに対応する具体的な対策をお述べいただきたいと思います。先ほど長官は、このことは頭が痛い、こうおっしゃいまして、給与待遇面での改善と、こうおっしゃいましたが、根本的には、青年の愛国心をいまの自衛隊に託する、これは非常に無理である。そういう事態が自衛隊である。ここに充足率が非常に問題になる点があると思います。給与面あるいは待遇面での改善だけで、はたして長期的な、いわゆる政府のことばをかりると、国を守る自衛隊たり得るかどうか、私は疑問であると思います。また、現在の予備自衛官の実数はどのぐらいになっているのか。この予備自衛官の活用法、あるいは出動の方法等についても、具体的に示していただきたいと思います。
 また、陸上自衛隊の現在の定員十七万九千人に対して、その充足率は八七%といわれておりますが、問題は、兵器に関しては定員数どおりに確保されているため、小銃で五万八千丁、短機関銃で四千四百丁、六〇ミリ迫撃砲で七百門、五七ミリ無反動砲三百五十門、七五ミリ無反動砲八十門が余っているといわれているのであります。このような余剰兵器がありながら、小銃等は毎年九千丁ずつが新規に調達されるという計画が四次防であります。小銃等の更新は、具体的にはどのように実施しているのか。また、使用されなくなった兵器及び余剰兵器はどのように処理されているのか。また、装備品の編成表の改正はどうなっているのか、それぞれ明らかにしていただきたいと思います。
 次には、兵器の国産化についてお尋ねいたします。
 四次防におきましては、その主要の一つは兵器の国産化であります。最近、防衛産業界や経団連の防衛生産委員会などにおいては、政府に対して兵器国産化の比率をもっと高めるべきであるとか、兵器の輸出を認めるべきであるとかとの要求が出ております。産軍複合の危険な芽が生まれつつあるといわねばならないのでありますが、政府は、これに対しどのようにお考えになっているか、お伺いいたします。
 また、武器輸出禁止法案をこの際成立させるべきではないでしょうか。いかがでしょう。さらに、小銃など輸出された軍事物資の状況を、ここ三年間、克明に報告をしていただきたい。
 米軍基地の返還が実施されているにもかかわらず、返還された米軍基地は、自衛隊による肩がわり使用がされている実態があります。先ほども質問にあったとおりであります。返還後の米軍基地は自衛隊が使用せず、住民の福祉に還元させるという大原則を明らかにすべきでありますが、政府は、この点どのように考えているのか。また、過去三年間に返還された米軍基地で、自衛隊が使用しているところの場所、面積、使用状況等についても具体的に説明いただきたいと思います。
 あわせて、私は、航空自衛隊の木更津飛行場にある約五十万平方米に及ぶ九ホールのゴルフ場について指摘したいと思います。なお私は、この問題を取り上げる前、長官のほうにこのことを事前に通告しておきました。いまここで問題になっている自衛隊が、たとえ米軍がつくったゴルフ場であるにせよ、五十万平方米、九ホールにも余るこのゴルフ場でゆうゆう自適のプレイを楽しむなんということは、それこそ、国民感情として絶対に許せないわけであります。私はいつもこのゴルフのことを言うのですが、私はゴルフも自分でやれるような身分になりたいし、また、やる機会をつくりたいと思いますが、貧乏ひまなしということでありまして、する機会がない。しかしながら、各省庁で国有地にゴルフ場を持って、そして一つの省庁がこのゴルフ場を管理しているという省庁があったら、総理大臣、お聞かせ願いたい。
 まず、いま問題になっている防衛庁だけじゃないでしょう。防衛庁が国有地のゴルフ場を管理しているなんということは、これこそたいへんな問題であります。私はいま申しましたように、この事実は事前に防衛庁長官のほうに言っておきました。これについての感想と、当然きびしい処置をすることは間違いないと思いますが、その処置についてもお聞かせ願いたいと思います。
 また、さきの日米安保条約運用協議会で大量の米軍基地の返還が決定されましたが、その後の在日米軍基地の整理統合の進捗状況を示してもらいたいと思います。なかんずく、関東計画、また、沖繩における遊休施設に対し返還期日が明確ではありませんので、具体的にその予定及び返還状況もあわせて明確にしていただきたい。
 具体的な問題としては、赤坂にあります山王ホテルの契約についてであります。東京地裁の判決で国側の敗訴が決定いたしました。明け渡すためには代替施設がない、こういうことでありますが、どのようにこれを解決するのかもお聞かせいただきたいと思います。
 次に、横須賀基地の第七艦隊母港化が進捗しているわけであります。先ほども若干質問がありましたが、その状況を御説明いただきたいと思います。なかんずく、一千万世帯にものぼるといわれている家族の移住状態はどうなっているのか。また、空母ミッドウェーは――申しわけありません。一千世帯でございます。たまには間違えることもあります。一千世帯にのぼるといわれている家族の移住状況はどうなっているのか。また、空母ミッドウェーの寄港はいつごろに予想されているのか、お教えいただきたいと思います。
 また、核兵器積載の有無についてであります。従来ならば、アメリカがノーと言うと、日本はオウム返しにノーと言う、こんな「脳」のない話はもうやめたらいいと思う。もうこの際、核に対する国民の疑惑を抜本的に晴らすためには、いままでの答弁あるいは政府の姿勢を改めるべきであると思いますが、この点について、政府の考えをお聞かせ願いたいと思います。
 さらに、先ほども触れられましたが、このまま進めば、エンタープライズの寄港という既成的な容認事実もつくるのではないかという危惧がありますが、この点の政府の見解もお聞かせ願いたいと思います。
 次に、自主防衛についてお聞きいたします。
 政府は、これまで機会あるごとに、自主防衛強化の必要性を訴えていますが、政府のいう自主防衛の強化とは、具体的に何をさすのか、説明していただきたい。また、政府の言い自主防衛の範囲は、戦闘爆撃機が入るのか。これまで、戦闘爆撃機は持たないという態度を明らかにしているが、これは将来とも不変なのかどうか。あらためて、この際答弁をいただきたいと思います。さらに、日本の周辺海域には、他国の原子力潜水艦がかなり潜行しているのでありますが、これに対応するため、わが国も原潜を持つべきだという考えが自衛隊の中にあると聞いておりますが、これは自主防衛の範囲に入るのかどうかも御答弁を願います。
 最後に、シビリアンコントロールの問題についてお尋ねいたします。
 いわゆるシビリアンコントロールについては、前佐藤内閣の時代にも問題とされたところであり、シビリアンコントロールの確立こそ急務であります。ところが、先月上旬、自衛隊制服組による政治的発言が防衛庁の認可のもとに公表されました。これは、昭和四十年の三矢研究事件と同様の性格を持つものであります。すなわち、制服組がわが国の防衛政策に触れ、その大きな転換を要求する発言を行なったことは、明らかに文民統制から逸脱した行為であり、制服組による政治介入のあらわれであると言わざるを得ません。このような制服組による政治介入問題について、どのような考えを持たれているのか、所信をお伺いしたいのであります。また、このような問題が繰り返し発生していることは、すでにシビリアンコントロールが形骸化していることを示していると思うのでありますが、いかがでありましょうか。
 さらに、政府は、昨年四月の四次防予算の先取り問題、沖繩への自衛隊物資の搬入の際、わが党をはじめとした野党側の追及により、文民統制の確立を国民に公約いたしました。ところが、一向にその実があがっていないのでありますが、政府は、文民統制の確立のため、どのような措置をとられ、またとられていこうとするのか、この際、あわせて明らかにしていただきたい。
 また、今回の制服組による政治的発言の中には過視できない問題を含んでいますので、一、二政府の見解を確認したいと思うのであります。
 まず、従来から政財界の一部で主張されておりますマラッカ海峡防衛論を肯定する、わが国周辺海域以遠の効果的な海上交通保護の必要性が強調されておりますが、この問題について、政府はどのように考えているか。
 また、武器輸出禁止三原則の再検討、さらに東南アジア諸国からの軍事的支援の取りつけ等についても述べられておりますが、これについても、政府はどのように考えているか。
 さらに、平和目的である海洋開発への自衛隊の参加についても発言されておりますが、あわせてこの問題についても、どう考えられているか、所見をお尋ねしたいと思います。
 従来から、わが党は、シビリアンコントロールの確立を確かなものとするため、衆参両院に安全保障常任委員会の設置を強く主張してまいりましたが、この際、安全保障常任委員会の国会設置について政府はどのように考えているかも御答弁いただきたいと思います。
 次に、長沼判決についてであります。私、委員会におきまして若干総理に質問しました。ここでは、その補足の質問の意味で、若干の質問をいたしたいと思います。
 四年数カ月もの長い年月にわたって争われてきた長沼ナイキ基地訴訟で、自衛隊違憲であるとの明確な断を下されたことは、実に意義深いものであることは言うまでもありません。憲法第九条の解釈を歪曲、拡大解釈してきた政府の従来の自衛隊合憲論が明確に違憲であるとの法的解釈により、いま自衛隊の存在自体が疑問視されているとき、四次防の遂行、そして防衛二法案を成立させようということは、今回の判決を無視した許しがたい暴挙であると思いますが、重ねて、再三再四、再五再六、この本会議場において総理の所見をお伺いしたいと思います。
 また、自衛隊を合憲とする学者は一二%ぐらいしかいないといわれております。第九条の条文を率直に読めば、自衛軍を持てるという解釈は絶対できません。さらに、憲法の条文に軍の編成や統帥に関する規定が全くないことから見ても、憲法自衛軍を想定していないことははっきりしているのでありますが、この点の総理の御見解はいかがでございましょうか。長沼判決により、安全保障政策をもう一回根本的に考え直す気はないか。これも私先般聞きましたが、もう一度御答弁をお願いしたいと思います。
 国会で安全保障論議が十分尽くされないために、司法で争わなければならないということになっております。国会の場に安全保障特別委員会を設け、国防論議を活発に行ない、そして、最終的には、国民にその方法は判断をゆだねることが大事であります。たとえ裁判所の判決が最終的にどうきまろうとも、この判決は尊重し、正面から政府がまじめに取り組み、国民の意見を反映する国会の場において十分審議を尽くすべきであると思うわけでありますが、いかがでしょう。
 さらに、自衛隊の公益性の問題であります。第三次防計画に基づいた航空自衛隊が装備するナイキ八一キュリーズの基地設置は、明らかに公益上に合致しないことであることは間違いありません。政府の「公益上」という根拠を伺いたいと思います。
 また、戦力にあらざる自衛力なんておかしいというのが一般庶民の常識であり、憲法を法律的に解釈すれば、違憲判決は当然の結果であります。しかし、政府は上訴の結果には楽観的であり、一般的にも上級審に行くほど政治裁判だと受け取られておりますが、総理は、高裁あるいは最高裁でこれは政府が絶対勝つんだと、こういう確たる自信があるかどうか、この際お伺いしておきます。また、あわせて、特に判決直後の関係閣僚及び党の要職にある者の談話等には、まことに無節操な発言が多く見られました。防衛庁長官の訓示にもその事実があったわけでありますが、これは、裏では司法を尊重すると言いながら、行政が司法に介入するという言語道断の態度であります。これらについて、総理は国民にどう釈明するのかも、あわせてお伺いいたします。
 今回の判決の結果、鎌倉市釧路市等では、同市に委託された自衛隊の募集業務を最終判決が出るまで停止する動きがあります。判決を尊重すれば当然の処置と思われますが、政府はこれにどう対処するおつもりなのですか。
 次に、保安林指定解除による洪水防止等の代替工事は、判決文の中に、「保安林の機能に代替する機能を果たすべき施設は不備である」と述べられておりますが、政府は、現地のその不備の疑問点について調査されましたか、あるいはどのような処置をとられましたか。あるいは一方的に、この判決文をそうじゃないと、こう否定するおつもりでしょうか。
 さらに、最後に、私が懸念している一つには、今後も行なわれる数多くの自衛隊に関する裁判があります。間もなく判決が予定されている百里基地裁判、小西裁判等がありますが、具体的にこの近況をお聞かせいただきたいとともに、これに対しての見通しについて、政府の考えをお聞かせいただきたいと思います。
 最後に、わが国の防衛と密接な関連を持つ国際情勢についてお伺いいたします。
 まず、北ベトナムとの国交樹立についてですが、このたび、日本とベトナム民主共和国との間に正式な外交関係が樹立されましたが、これはインドシナはもとより、アジアの平和前進に寄与するものであり、心から歓迎するものであります。また、これによって、インドシナ問題がより安定的な平和に向かうことを期待するものであります。ただ、今後の問題として、まずインドシナ和平の早期実現と、復興のための経済援助の強化でありますが、従来わが国は対米追随に堕し、アメリカのインドシナ戦略に加担してきたことは明白でありますが、まず、この従来の姿勢を十二分に反省することからインドネシアへの経済援助も始めなければならないと思いますが、これに対する反省の意思があるのかどうか、お伺いいたします。この反省の上に立って、ベトナム和平協定の完全実施のため、政府は全力をあげ、経済復興と発展に積極的に協力すべきであると思うのですが、いかがでしょうか。また、ベトナム民主共和国に対する援助の具体的構想も、あわせて示していただきたいと思います。
 また、在日米軍基地から南ベトナム向け武器補給が行なわれておりますが、北ベトナムと国交が樹立された現在、このようなことが行なわれていることは矛盾していると思いますが、今後の方針をお聞かせいただきたい。
 そもそも、このような矛盾が発生し、かつまた、今後の日本外交にとってマイナス要因となっているのは、結局、日米安保条約が存在するからであります。したがって、日米安保の長期堅持の姿勢は、この際再検討すべきであると思いますが、いかがでしょう。先ほど総理は、現時点においては、再検討の意思はないと、こうおっしゃっておりますが、しからば再検討をする、あるいは再検討を余儀なくされるであろうような国際的な情勢の変化、あるいは国内的な情勢の変化の要因とはどういうことであるかも、ひとつお聞かせいただきたい。これは事前に通告しておりません。ひとつ即答をお願いしたいと思います。
 また、現在、政府は、南ベトナム臨時革命政府との外交関係を拒否しているのであります。また、南ベトナム臨時革命政府との国交樹立については、ベトナム協定の趣旨からすれば当然のことではありますが、せめて百歩譲って、往来の自由だけでも早く認めてもいいのではないかと思いますが、いかがでしょう。
 次に、朝鮮問題に移ります。
 世界における分断国家のうちで、東ドイツ北ベトナムと国交樹立を行なった今日、残っているのは、朝鮮民主主義人民共和国ただ一つになっております。政府は、この朝鮮民主主義人民共和国との国交樹立について、どのような計画をお立てになっているのか、所信のほどをお聞かせいただきたいと思います。
 また、国連問題ですが、去る十八日より第二十八回国連総会が開催されました。この総会の最大の焦点は朝鮮問題であるといわれております。この総会の席上、大平外相は、南北朝鮮の国連同時加盟を主張するようでありますが、これは、わが国として南北平和統一をはばむことになるのではないでしょうか。この点、所信はいかがでしょう。
 さらに、南北両朝鮮の国連同時加盟は、朝鮮民主主義人民共和国が反対しているのであります。この事実を政府は一体どう受けとめて、そして同時加盟を主張しようというのでありましょうか。一方の国家が反対している事実を知りながら、なおも同時加盟を強要する政府の行為は、南北平和統一をはばむ行為と言わざるを得ないのであります。さらには、内政干渉にも通ずる行動であります。その上、なお悪いことには、南北同時加盟に対して、アメリカ、イギリスとともに共同提案を行なおうとしているようですが、一体政府は、南北朝鮮の平和的統一を心から願ってそのような行動をとっているのでしょうか、お伺いいたします。
 また、このたびの国連総会の焦点は、国連軍の撤退問題もその一つであります。現在二十五カ国が共同提案国となっている、中国、ソ連など北朝鮮支持派提案による国連軍撤退の決議案に対し、政府はどのように考えているのか質問したいと思います。
 この国連軍撤退決議案に対し、日米など韓国支持派の共同提案による事実上の現状維持決議案は、十三カ国が提案しているのみで、否決される可能性が大だといわれております。したがって、現状維持決議案が否決され、国連軍撤退決議案が採択されたとき、政府は国連の決定を尊重することは間違いないと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、キッシンジャー構想として提案されている新大西洋憲章についてお尋ねいたします。
 この憲章は、軍事、経済両面にわたる米国主導の新世界秩序を形成するに際し、いわゆる世界政治秩序に衝撃を与えるまでになった新しい日本に対して責任分担を課そうというものであり、米国の利益のために、日本の利益をあるいは従属させようとする意図があるのではなかろうかという危惧があります。政府は、このような憲章に参加することをすでに決定しているのでしょうか、お尋ねいたします。あえてこの憲章に参加するならば、わが国は軍事及び経済の両面にわたって、日本が欧米の責任分担を肩がわりするようなことには決してならないようにしなければならないと思いますが、いかがでしょう。
 ところが、政府は、防衛問題については参加しない、と。元来、政治、経済と防衛とは密接な関係があるのであります。このため、この二者間の区分は非常に困難ではないかと、こう思います。政府が防衛に参加しないと断言するならば、その歯どめはどこに置くのか、具体的にお教えいただきたいと思います。
 最後に、間もなく総理が訪ソするわけであります。長年の懸案であった北方領土問題について、当然話し合うことになると思いますが、政府はどのような基本姿勢で臨もうとしているのか、お伺いしたい。ソ連の領土問題に対する姿勢に柔軟性が見られたという報告もありますが、国後、択捉、歯舞、色丹の四島を返還させるのだという姿勢には絶対変わりないというのかどうか、この際お聞かせいただきたいと思います。また、その際、この四島返還が平和条約締結の前提となるべきだと思いますが、総理の所信をお尋ねしたいと思います。
 また、これら四島のいわゆる北方領土については、返還後も日米安保に基づく米軍基地並びに自衛隊などの軍事基地は一切設置しない旨、この際明らかにして交渉に臨むべきであると思いますが、この点も所信をお聞かせいただきたいと思います。
 日ソ首脳会談においては、長年ソ連政府が言い続けてきた、いわゆるアジア集団安保構想がまたもう一つの議題になることも予想されますが、このアジア安保の内容については必ずしも明確なものはないわけでありますが、ソ連との交渉に臨む総理としては、基本的な考えがなくてはならないことは言うまでもありません。その基本的な考えをここに示していただきたいと思います。さらに、このアジア安保構想に対し・中国の参加が不可欠の条件であると思いますが、この点についての総理の見解を明確にしていただき、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
国務大臣田中角榮君) 黒柳明君にお答えをいたします。
 まず第一は、台湾、朝鮮地域において紛争が発生した場合、自衛隊の出動はあり得るのかという問題でございますが、わが国の自衛権の行使は、いわゆる自衛権発動の三条件、すなわち、わが国に対する武力攻撃が発生したこと、この場合に、これを排除するために他に適当な手段がないこと及び必要最小限度の実力行使にとどまるべきことをもって行なわなければならないことは、これまで政府の見解として申し上げてきたところでございます。したがいまして、台湾、朝鮮地域において紛争が発生したということで自衛隊が防衛出動をするということはあり得ないわけであります。
 朝鮮における日本の権益保護も兼ねて自衛隊の出動は可能かということでございますが、現行の自衛隊法上から、そのような派遣は認められておりません。
 次は、自衛隊法七十六条第三項についての御質問がございましたが、国会が不承認の決議をした場合には、国会の意思のとおり自衛隊を撤収すべきものと考えておるのでございます。
 抑止力について申し上げますと、「侵略に対する抑止力として有効な防衛力の整備」は、わが国の国防の基本方針を述べたものでございまして、現在の四次防も同一の基本方針を掲げて、必要最小限の自衛力を漸進的に整備しようといたしておるものでございます。なお、抑止力とは、一般的に言って、万一侵略が行なわれた場合、侵略者に手痛い打撃を与える力を持つことにより、侵略の意図を思いとどまらせるような防衛力のことでございます。今後の防衛計画についてどのような考えを持っているかという御指摘でございますが、四次防以後の防衛力整備をどのように行なうかについては、今後慎重に検討してまいりたいと、こう考えております。徴兵制についての御発言にお答えをいたしますが、しばしば政府が申し述べておりますとおり、半時においてはもちろんのこと、有事の場合でありましても、徴兵制度という限りは、憲法の許容するところではないと考えておるのでございます。
 産軍複合問題に対しての御発言がございましたが、わが国工業生産に占める防衛生産の比率は、間々申し上げておりますとおり、〇・四%と諸外国に比べて非常に小さいのでございます。その意味で、産軍複合といわれるような事態はないと考えておるのでございます。将来ともそのような弊害が生ずることのないよう、十分な配慮をしてまいりたいと考えます。
 武器輸出禁止法案を成立させるべきではないかという御指摘がございましたが、わが国からの武器の輸出によって国際紛争を助長することは、厳に避けなければならないことでございまして、政府は、従来から武器輸出三原則を設定するなど、きわめて慎重な態度をとってきておりますことは御承知のとおりでございまして、今後ともこの方針に変わりはございません。
 最近三年間の武器輸出の状況について述べよということでございますが、日本からの武器輸出は、昭和四十五年度七十万円、四十六年度一億三千万円、四十七年度は実績ゼロでございます。輸出されたものは、警察用あるいは護身用のものでございます。
 制服組がわが国の防衛政策に関する提案を行なっていることは、文民統制を逸脱するものではないかという御指摘でございますが、御指摘の件は、防衛研修所研究資料「ソ連海洋戦略のわが国防衛に及ぼす影響について」であると思われますが、本論文は、防衛研修所職員伊藤一等海佐の所内限りの研究報告でございまして、部外に公表したものでもございませんし、また、防衛研修所あるいは防衛庁の見解を示すものではないのであります。
 文民統制につきまして、いかなる措置をとったかということでございますが、昨年十月の九日、文民統制確立のための措置として、国防会議の議員を増加して、その運用に充実を加えることを定めましたほか、一定の防衛の装備等については、国防上の重要事項として国防会議にはかるべきことを決定いたしたわけでございます。また、特定の事項のためには、国防会議事務局に専門家の会議を設ける等の措置を講じております。
 安全保障常任委員会を国会に設置すべしというお考えでございますが、シビリアンコントロールの根源は国会にあると考えておりますので、国会に安全保障を所管する常任委員会が設けられ、広く安全保障の諸問題が論議されることが望ましいということは、間々申し上げておることでございまして、ぜひ設置をしていただきたいと、こういうことも考えておるわけでございます。
 長沼判決についての御質問でございますが、先ほども申し述べましたとおり、裁判所が政府の見解と異なる見解をとることがあっても、それは、三権分立のたてまえからいって当然あり得ることでございます。また、いわゆる審級制度をとるわが国の裁判制度のもとにおきましては、下級審の判決に不服があるときは、さらに上級審の判断を待つべきこともまた当然なのであります。今回の事件のように、重大な憲法解釈にかかる問題について、司法機関の最終決定を待たずに何らかの措置をとるというようなことは、むしろ、政府としてのその責任を全うするゆえんではありません。自衛力の整備は、わが国の平和と安全を維持し、国民の生命と財産を守るため、ゆるがせにできない事柄でございまして、政府としては、従来からの方針について何ら変更する考えはございません。
 憲法の条文に軍の編成や統帥に関する規定が全くないという御指摘でございます。政府といたしましては、憲法第九条は、わが国が主権国として持つ固有の自衛権まで否定したものではなく、したがって、この自衛権の行使を裏づける自衛のために必要最小限度の実力の保持を認めるものであると解しておるわけでございます。旧憲法にあったような、一連のいわゆる軍事規定が現憲法にないということと、自衛のための必要最小限度の実力の保持を憲法が認めていると解することとは、何ら矛盾するものではないと、こう考えております。
 長沼判決により安全保障政策を考え直すべしという御発言でございますが、今回の事件のように、重大な憲法解釈にかかる問題につきましては、司法機関の最終決定を待たずに、国の安全保障政策を再検討するようなことは、むしろ内閣としてその責めを全うするゆえんではありません。
 裁判所の最終判決がどうきまっても、これを尊重せよということでございますが、最終判決は、これを尊重することが当然であり、その結果を踏まえて、国会でも審議を尽くしていただきたいと存ずるものでございます。
 ベトナム和平協定の完全実施のため、政府は、その経済再建に積極的に協力をすべしという旨の御発言でございますが、政府としては、南ベトナム民族自決を確認したパリ協定の成立を歓迎しており、今後、対インドシナ外交を行なうにあたり、パリ協定の尊重が大前提であると考えておるのであります。わが国として、南ベトナムを含むインドシナ全域を対象に、戦災よりの復旧、民生安定、経済開発のために、できる限り協力をしてまいります。
 在日米軍基地から、南ベトナム向け武器補給が行なわれておるという旨の発言でございますが、わが国としては、米国が南ベトナム政府に対し武器等の補給を行なう場合には、損耗した武器等を国際監視のもとに、一対一のベースで補給することを認めているパリ協定に従って行なわれるものと考えており、この原則によって行なわれる限り、米国との安全保障条約上問題はないと考えておるのであります。
 次は、北ベトナムとの国交が樹立された現在、日米安全保障条約を堅持する姿勢を再検討せよという旨の御発言だったと思いますが、日米安保体制は、アジアにおける緊張緩和をもたらした基本的ワク組みの最も重要な柱であり、この柱が動揺することは、国際的不安定を助長することこそあれ、アジアの平和とわが国の安全に寄与する道ではありません。したがって、政府としては、軽々に安保体制を再検討するという考えは持っておらないのでございます。
 政府は、南ベトナム臨時革命政府との外交関係を拒否しておるという旨の御発言でございますが、政府は、ベトナム共和国政府を南ベトナムにおける唯一の合法政府として、これと外交関係を結んでおることは御承知のとおりでございます。いわゆる臨時革命政府支配地域の人々との交流につきましては、これまで同地域に対する復興援助の必要性、緊急性等を考慮して、ケース・バイ・ケースで検討いたしておりまして、今後とも、情勢の進展を踏まえ、適切に対処してまいる所存でございます。
 朝鮮民主主義人民共和国との国交樹立についての御発言でございますが、朝鮮民主主義人民共和国との国交樹立につきましては、南北対話の進展ぶり、南北両朝鮮と諸外国との関係等を総合して検討する必要がございます。現在のところ、具体的展望を持っておりません。
 北方領土問題についての姿勢、四島返還を日ソ平和条約の前提とすべしとの意味の御発言でございますが、わが国固有の領土である北方領土、すなわち歯舞、色丹、国後、択捉の返還を実現することによって、日ソ平和条約を締結するとの態度で臨みたいと考えております。過日、衆議院では決議をいただいておりますし、参議院の委員会におきましても御決議がございましたので、両院の御意思を十分体して折衝に当たりたいと、こう考えておるわけでございます。
 返還後の北方領土に米軍基地を設置しない旨と、アジア安全保障構想等に対するお考えがございましたが、これらは、まだ具体的な問題となっておりません。特に、アジア安全保障構想は全く内容が明確になっておりませんし、今後、内容を十分検討した上で慎重に対処しなければならない問題だと考えます。これらは日ソ首脳会議の段階において、隔意のない意見の交換を行ないたいという旨を考えておるわけでございます。
 まだたくさん御指摘がございましたが、残余の問題に対しては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)

自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議


○議長(河井彌八君) 日程第三、自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議案(鶴見祐輔君外八名発議)
 本案は、発議者から、委員会審査省略の要求書が提出されております。発議者要求の通り、委員会の審査を省略し、直ちに本案の審議に入ることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて本案を議題といたします。これより発議者に対し、趣旨説明の発言を許します。鶴見祐輔君。
   〔鶴見祐輔君登壇、拍手]
鶴見祐輔君 私は、只今議題となつた自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議案について、その趣旨説明をいたさんとするものであります。先ず決議案文を朗読いたします。
   自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議
  本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。
  右決議する。(拍手)
 この趣旨は、すでに三月八日、日米相互防衛協定調印の際、岡崎外務大臣とアリソン米国大使との挨拶のうちに述べられていることでありますが、我我は国民の名において、本院により改めてこれを確認せんと欲するものであります。
 只今本院を通過成立をいたしました防衛二法案は、委員長の報告によりましても、誠に重要なる内容を有するものであります。先般成立いたしましたMSA協定と相待つて、戦後日本に新らしき方向転換を示唆するがごとき要素を含んでおるのであります。自衛隊法により生まれんとする三部隊、殊に陸上自衛隊は、その名称の如何に呼ばれましようとも、その数量と装備、武器に至つては、満州事件前の我が国の陸軍に次第に近似するがごとき実力を備えんといたしております。又、その任務については、同法第三条におきまして、「直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛す」となし、その方法としては、第八十八条におきまして、「必要な武力を行使する」と明記してあります。而もこの自衛隊の数量は、米国駐留軍の漸減に応じ漸増せんとするのでありますから、戦力という文字の解釈如何にかかわらず、常識的用語としての軍隊の内容に近づきつつあることは、否みがたいのであります。故に今日の程度においても、すでに憲法第九条の明文に違反するとの議論が生じております。いわんやこれが更に数量的に増加せられ、又その使用の範囲が拡大せられるといたしますならば、我が国が再び、戦前のごとき武装国家となる危険すら全然ないとは申せないのであります。故に自衛隊出発の初めに当り、その内容と使途を慎重に検討して、我々が過去において犯したるごとき過ちを繰返さないようにすることは国民に対し、我々の担う厳粛なる義務であると思うのであります。
 その第一は、自衛隊を飽くまでも厳重なる憲法の枠の中に置くことであります。即ち世界に特異なる憲法を有する日本の自衛権は、世界の他の国々と異なる自衛力しか持てないということであります。
 その第二は、すべての法律と制度とは、その基礎をなす国民思想と国民感情によつて支えられて初めて有効であります。そして今日の日本国民感情の特色は、熾烈なる平和愛好精神であります。従来好戦国民として世界から非難をこうむつておる日本国民は、今や世界においても稀なる平和愛好国民となつておるのであります。それは日本国民が、最近九年間に実に深刻な経験をいたしたからであります。その一つは敗戦であります。これがどのように日本国民の思想に影響を与えたかは申述べる必要はありません。この悲痛な幻滅が戦争に対する日本国民の考え方を激変させたのであります。併し、日本の国民思想に深刻な影響を与えたいま一つの事実は、戦争後における勝利者と敗北者との関係であります。敗戦後の日本国民は、深い反省をいたしました。そうして謙虚な気持で新らしい出発をしようと思つていた。併し我々の期待を裏切るような出来事が国の中においても、海の外においても起つたのであります。我々が戦前に抱いたと同じような考えが、再び世界に拾頭せんとすることを我々は眺めたのであります。そして我々は無条件にそういう道ずれにはなりたくないと思うようになつたのであります。この二つの深刻な幻滅の結果として、日本民族の尊き体験として学びとりましたことは、戦争は何ものをも解決しないということであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)殊に原爆と水爆との時代において、戦争は時代錯誤であるということであります。(「そうだ、その通り」と呼ぶ者あり拍手)この惨禍をこうむつた唯一の国民として日本はこれを世界に向つて高唱する資格を持つておるのであります。然るに戦後九年にして、世界は再び大戦争の危険にさらされんとしておる。殊に東洋においてその危険が横わつておるのであります。そのときに日本に、自衛隊が誕生したのであります。故に我々はこの自衛隊の意義を明白に規正しておくことが特に必要であると思うのであります。思うに自衛隊は現在の世界情勢に対応するための時的な応急手段であります。若し国際情勢が今日のごとく二大陣営に分れて緊迫していなかつたならば、この程度の自衛隊をも必要としなかつた筈であります。七年前我々は、平和を愛好する諸国民の公正と信義に信頼して、みずから進んで戦争を放棄したのであります。故に今日創設せられんとする自衛隊は、飽くまでも日本の国内秩序を守るためのものであつて、日本の平和を守ることによつて東洋の平和維持に貢献し、かくしてより高度なる人類的大社会的組織の完成を期待しつつ一つの過渡的役割を果さんとするものであります。それは決して国際戦争に使用さるべき性質のものではありません。この日本国民の平和に対する希求は外国の指導に原因するものでもなく、又一時の流行でもありません。あの戦後の深刻なる幻滅に刺激せられて、国民の中に起つた一つの精神革命の結果であります。この九年間に我々は過去の国家至上主義の思想から解放されて、人間尊重の考え方に転向したのであります。殊にそれは若き世代と婦人との間に力強く成熟しつつある思想であります。この個人を尊ぶという考え方は、民主主義の基底であり、それは世界平和の思想に連なるものであり、この国民感情憲法第九条の明文と相待つて、自衛隊の行動を制約すると思うのであります。然るにこの自衛隊という文字の解釈について、政府の答弁は区区であつて、必ずしも一致しておりません。この間、果して思想の統一があるか、疑いなきを得ないのであります。その最も顕著なるものは、海外出動可否の点であります。何ものが自衛戦争であり、何ものが侵略戦争であつたかということは、結局水掛論であつて、歴史上判明いたしません。故に我が国のごとき憲法を有する国におきましては、これを厳格に具体的に一定しておく必要が痛切であると思うのであります。自衛とは、我が国が不当に侵略された場合に行う正当防衛行為であつて、それは我が国土を守るという具体的な場合に限るべきものであります。幸い我が国は島国でありますから、国土の意味は、誠に明瞭であります。故に我が国の場合には、自衛とは海外に出動しないということでなければなりません。如何なる場合においても、一度この限界を越えると、際限もなく遠い外国に出動することになることは、先般の太平洋戦争の経験で明白であります。それは窮窟であつても、不便であつても、憲法第九条の存する限り、この制限は破つてはならないのであります。外国においては、過去の日本の影像が深く滲み込んでいるために、今日の日本の戦闘力を過大評価して、これを恐るる向きもあり、又反対に、これを利用せんとする向きも絶無であるとは申せないと思うのであります。さような場合に、条約並びに憲法の明文が拡張解釈されることは、誠に危険なことであります。故にその危険を一掃する上からいつても、海外に出動せずということを、国民の総意として表明しておくことは、日本国民を守り、日本の民主主義を守るゆえんであると思うのであります。
 何とぞ満場の御賛同によつて、本決議案の可決せられんことを願う次第であります。(拍手)

国際平和協力業務における武器の使用

国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律 (平成四年六月十九日法律第七十九号)

(武器の使用)
第二十四条 第二十五条 前条第一項の規定により小型武器の貸与を受け、派遣先国において国際平和協力業務に従事する隊員は、自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体を防衛する防護するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、当該小型武器を使用することができる。
 (略)
3 第九条第五項の規定により派遣先国において国際平和協力業務に従事する自衛官は、自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員、隊員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体を防衛する防護するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、第六条第二項第二号ホ(2)及び第四項の規定により実施計画に定める装備である武器を使用することができる。
 (略)
7 第九条第五項の規定により派遣先国において国際平和協力業務に従事する自衛官は、その宿営する宿営地(宿営のために使用する区域であって、囲障が設置されることにより他と区別されるものをいう。以下この項において同じ。)であって当該国際平和協力業務に係る国際連合平和維持活動、国際連携平和安全活動又は人道的な国際救援活動に従事する外国の軍隊の部隊の要員が共に宿営するものに対する攻撃があったときは、当該宿営地に所在する者の生命又は身体を防護するための措置をとる当該要員と共同して、第三項の規定による武器の使用をすることができる。この場合において、同項から第五項までの規定の適用については、第三項中「現場に所在する他の自衛隊員、隊員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」とあるのは「その宿営する宿営地(第七項に規定する宿営地をいう。次項及び第五項において同じ。)に所在する者」と、「その事態」とあるのは「第七項に規定する外国の軍隊の部隊の要員による措置の状況をも踏まえ、その事態」と、第四項及び第五項中「現場」とあるのは「宿営地」とする。

第二十六条 前条第三項(同条第七項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定するもののほか、第九条第五項の規定により派遣先国において国際平和協力業務であって第三条第五号トに掲げるもの又はこれに類するものとして同号ナの政令で定めるものに従事する自衛官は、その業務を行うに際し、自己若しくは他人の生命、身体若しくは財産を防護し、又はその業務を妨害する行為を排除するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、第六条第二項第二号ホ⑵及び第四項の規定により実施計画に定める装備である武器を使用することができる。
2 前条第三項(同条第七項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定するもののほか、第九条第五項の規定により派遣先国において国際平和協力業務であって第三条第五号ラに掲げるものに従事する自衛官は、その業務を行うに際し、自己又はその保護しようとする活動関係者の生命又は身体を防護するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、第六条第二項第二号ホ⑵及び第四項の規定により実施計画に定める装備である武器を使用することができる。
3 前二項の規定による武器の使用に際しては、刑法第三十六条又は第三十七条の規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。
4 自衛隊法第八十九条第二項の規定は、第一項又は第二項の規定により自衛官が武器を使用する場合について準用する。

国連での人道復興活動

これまでイラク特措法などで行われてきた人道復興活動については「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(PKO法)」に組み込まれることになっている。

(定義)
第三条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(略)
国際連携平和安全活動 国際連合の総会、安全保障理事会若しくは経済社会理事会が行う決議、別表第一に掲げる国際機関が行う要請又は当該活動が行われる地域の属する国の要請(国際連合憲章第七条に規定する国際連合の主要機関のいずれかの支持を受けたものに限る。)に基づき、紛争当事者間の武力紛争の再発の防止に関する合意の遵守の確保、紛争による混乱に伴う切迫した暴力の脅威からの住民の保護、武力紛争の終了後に行われる民主的な手段による統治組織の設立及び再建の援助その他紛争に対処して国際の平和及び安全を維持することを目的として行われる活動であって、二以上の国の連携により実施されるもののうち、次に掲げるもの(国際連合平和維持活動として実施される活動を除く。)をいう。
 イ 武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意があり、かつ、当該活動が行われる地域の属する国及び紛争当事者の当該活動が行われることについての同意がある場合に、いずれの紛争当事者にも偏ることなく実施される活動
 ロ 武力紛争が終了して紛争当事者が当該活動が行われる地域に存在しなくなった場合において、当該活動が行われる地域の属する国の当該活動が行われることについての同意がある場合に実施される活動
 ハ 武力紛争がいまだ発生していない場合において、当該活動が行われる地域の属する国の当該活動が行われることについての同意がある場合に、武力紛争の発生を未然に防止することを主要な目的として、特定の立場に偏ることなく実施される活動
人道的な国際救援活動 国際連合の総会、安全保障理事会若しくは経済社会理事会が行う決議又は別表第一別表第二に掲げる国際機関が行う要請に基づき、国際の平和及び安全の維持を危うくするおそれのある紛争(以下単に「紛争」という。)によって被害を受け若しくは受けるおそれがある住民その他の者(以下「被災民」という。)の救援のために又は紛争によって生じた被害の復旧のために人道的精神に基づいて行われる活動であって、当該活動が行われる地域の属する国の当該活動が行われることについての同意があり、かつ、当該活動が行われる地域の属する国が紛争当事者である場合においては武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意がある場合に、国際連合その他の国際機関又は国際連合加盟国その他の国(次号及び第四号第六号において「国際連合等」という。)によって実施されるもの(国際連合平和維持活動として実施される活動及び国際連携平和安全活動として実施される活動を除く。)をいう。

自衛隊法の改正(4) -在外邦人の保護-

(在外邦人等の保護措置)
第八十四条の三 防衛大臣は、外務大臣から外国における緊急事態に際して生命又は身体に危害が加えられるおそれがある邦人の警護、救出その他の当該邦人の生命又は身体の保護のための措置(輸送を含む。以下「保護措置」という。)を行うことの依頼があつた場合において、外務大臣と協議し、次の各号のいずれにも該当すると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、部隊等に当該保護措置を行わせることができる。
 一 当該外国の領域の当該保護措置を行う場所において、当該外国の権限ある当局が現に公共の安全と秩序の維持に当たつており、かつ、戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。第九十五条の二第一項において同じ。)が行われることがないと認められること。
 自衛隊が当該保護措置(武器の使用を含む。)を行うことについて、当該外国(国際連合の総会又は安全保障理事会の決議に従つて当該外国において施政を行う機関がある場合にあつては、当該機関)の同意があること。
 三 予想される危険に対応して当該保護措置をできる限り円滑かつ安全に行うための部隊等と第一号に規定する当該外国の権限ある当局との間の連携及び協力が確保されると見込まれること。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による外務大臣防衛大臣の協議の結果を踏まえて、同項各号のいずれにも該当すると認める場合に限り、同項の承認をするものとする。
3 防衛大臣は、第一項の規定により保護措置を行わせる場合において、外務大臣から同項の緊急事態に際して生命又は身体に危害が加えられるおそれがある外国人として保護することを依頼された者その他の当該保護措置と併せて保護を行うことが適当と認められる者(第九十四条の五第一項において「その他の保護対象者」という。)の生命又は身体の保護のための措置を部隊等に行わせることができる。

(在外邦人等の保護措置の際の権限)
第九十四条の五 第八十四条の三第一項の規定により外国の領域において保護措置を行う職務に従事する自衛官は、同項第一号及び第二号のいずれにも該当する場合であつて、その職務を行うに際し、自己若しくは当該保護措置の対象である邦人若しくはその他の保護対象者の生命若しくは身体の防護又はその職務を妨害する行為の排除のためやむを得ない必要があると認める相当の理由があるときは、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし、刑法第三十六条又は第三十七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。
2 第八十九条第二項の規定は、前項の規定により自衛官が武器を使用する場合について準用する。
3 第一項に規定する自衛官は、第八十四条の三第一項第一号に該当しない場合であつても、その職務を行うに際し、自己若しくは自己と共に当該職務に従事する隊員又はその職務を行うに伴い自己の管理の下に入つた者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし、刑法第三十六条又は第三十七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。