武力の行使とは


○藤島委員 政府は、北朝鮮の船の入港の問題でも、何もできない、できないとずっと言い続けて、何もできないとはおっしゃらなかったですね、川口さんも。一部できるものがあるというような答弁だったんですけれども、結果的には大変なことがやれて、事実上入港阻止できた。そんなことをやれるわけですね。
 今の答弁ですと、やはり同じようなことが、ある程度はやれるけれども、はっきりさせるには新しい法律の方がいいだろうということで、本当はなくてもやれるような部分であり、今回の法律は要するに自衛隊を送るための法律だ、そういうふうにおっしゃっているというふうに理解をしておきたいと思います。
 それじゃ、もう一点について伺いたいんですが、自衛隊の武器使用の件ですけれども、これは私が現役時代担当して、法制局と随分やり合って、結局、武力行使に該当してもいけないし、あるいはよその国の軍隊とやる場合、一体化してもいけないという二点があって、ぎりぎりのところ、最初に自然権的な権利ということでPKO法に盛り込まれた経緯がありますね。その後、それだけじゃ狭過ぎるということで、実は前回のような、一緒にいる人のところまで防護できるというところにちょっと膨らんだわけです。
 今度は、要するに、いろいろな要請からすれば、業務遂行上、それを阻害される場合に、それを排除するための行為、これができないと意味がない。これができるぐらいでないと、先ほど首藤議員も言いましたけれども、非常に治安状態が危ない状態になって、どこがいいとかどこが悪いという状態じゃないという状態に自衛隊を送った場合に、必ずこの問題が来る。
 この問題を解決しないまま本当に送ったら、自衛隊が本当に犠牲者が大変なものが出る。犠牲者が出てから、やはり武器の使用についてちゃんとしておけばよかった、これじゃ間に合わないんですよね。今まで、確かにルワンダだとかモザンビークだとかカンボジアだとか私も全部行ってきましたし、たまたま自衛隊にそういう事故がなかった。しかし、現場に行ってみればわかりますけれども、大変自衛官は緊張した状態で過ごしているわけですよ、結果的にそういう状態がなかったということなんですけれども。
 今回行かせる行かせないの根拠は別の問題ですけれども、私は非常に問題があると思いますけれども、行かせるからには武器使用はきちっとしてやらないかぬ。今回に関して言えば、もしこれを直さないまま行かせることは非常に危ないと思うんです。
 ただ、これは今まで法制局の、私が先ほど申し上げたような二点の問題があって、なかなか簡単じゃない。これが簡単にクリアできるようであれば、国民世論の関係もあって、武器をもっと大きなものを持たせ、あるいは、使用ももっと国際的なスタンダードに変える。これはもっと早くからできたはずなんですね。ところが、この憲法解釈の問題でなかなか進んでいなかった。ただ、法制局も、今の規定だけでもう目いっぱいであとは全然できないと言っていたわけじゃなくて、大変グレーな部分があるというような表現もしておったわけです。
 この件についてもう一度、法制局の現時点での、法制局も、ある時点で決めたらそれで一歩も進まないというわけじゃないので、先ほどの自然権的なものからだんだん進んできているわけですけれども、このグレーの部分の解釈といいますか、今回の、いわば自衛隊をやるのならそうしてほしいという国民的な要請、こういうのを踏まえて、現時点での考え方を伺いたいと思います。
○山本政府参考人 御指摘の点は、従来から相当に検討が進んでおるところでございます。
 現在の考え方でございますけれども、いわゆるPKO法、それからテロ対策特別措置法におきまして、自己または自己とともに現場に所在する他の自衛隊員、もしくはその職務を行うに伴い自己の管理のもとに入った者の生命または身体の防衛のため、その防衛の武器の使用を認めておるわけでございます。
 これは、御指摘のとおり、まさにいわば自己保存のための自然権的権利というべきものでございますので、そのために必要な最小限度の武器の使用というものは、いかなる場合も憲法九条一項の禁ずる武力の行使に当たらないという考え方に基づいてやってきております。
 このように、武器の使用がすべて九条一項の禁ずる武力の行使に当たるとはもとより言えませんけれども、政府は、武力の行使とは、基本的には国家の物的、人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいうというふうに解してきておりますので、その相手方が国、または国に準ずる組織であった場合でも、憲法上の問題が生じない武器の使用の類型といたしましては、従来の自己等を防衛するためのもの及び自衛隊法九十五条に規定するもの以外にはなかなか考えにくいというふうに考えております。