国連における'impartiality'


 一方、国連PKOにおいては、「impartiality」は、どの当事者にもひいきや偏見なく任務を遂行することとされており[10]、その観点からは「不偏性」という和訳がその意味に一番相応しく思えます。ここでは紛争当事者ではなく、また受益者でもなく、任務遂行に向けた「不偏性」を指します。文民保護等といった任務を全うする際、中立性を犠牲にしてでも、任務遂行を妨害する要因を除外する覚悟が窺えます。「良い審判員は、不偏であるが、違反に対し罰を課すのと同様に、国連PKOも和平プロセスの違反や、国連PKOが支持する国際規範や原則に反する行為を見逃してはいけない」、と上記国連文書は述べています[11]。
 我が国の国際平和協力法では、「いずれの紛争当事者にも偏ることなく」と規定されています。我が国では、PKO参加5原則の議論は武力行使に集中しがちですが、同時に「中立性」や「impartiality」原則の変遷を十分考慮する必要があると考えます[12]。またimpartialityにしても、人道支援やインフラ復旧支援に限定した「公平性」を追求するのか、あるいは文民保護等といった新たな規範を遂行するにあたり、不可欠な「不偏性」を重視するのか、我が国の特殊性と国連PKO任務との融合性を勘案した議論が期待されます。