令和5年11月8日 財務金融委員会

階委員 立憲民主党階猛です。本日はよろしくお願いいたします。

 早速ですが、財務大臣からまず伺いたいと思います。

 突然ですけれども、大臣の御家庭は、家計は奥様が管理されているのか、それとも御自身で管理されているのか、どちらでしょうか。

鈴木(俊)国務大臣 妻が管理しております。

階委員 すてきな奥様なので、多分そうかなと思っていました。私もそういう感じで、小遣いをもらっています、毎月。

 それで、今回、還元、還元と言われていますけれども、例えば私のケースでいうと、去年、サラリーマンだったとして、残業代が増えました、残業代が増えたものはそのときに生活費とかで使っちゃいました、半年ぐらいたってから、あのとき残業代が増えたんだから小遣い増やして還元してくれよと言っているようなものだと思うんですね。しかも、これから教育費だとか住宅ローンの利払いが増えるだとか、あるいは防犯工事にお金がかかるとか、いろいろ支出がメジロ押しの中で、小遣い増やして還元してくれよと言ったら、奥さん、何と言いますかね。ばか言っているんじゃないよと、私の家庭だったら一蹴されると思いますよ。多分、普通の家庭はそうだと思います。そういった意味で、今回、総理は還元、還元と言っていますけれども、何を言っているんだというふうに私は思っていました。

 と思っていたところ、たまたま今日、日経新聞を見ましたら、自民党の宮沢税調会長が、今回の給付プラス減税の、資料でいいますと九ページにポンチ絵もつけていますけれども、このスキーム、これは還元ではないというふうにおっしゃっているんですね。宮沢氏いわく、還元といっても税収は全部使った上で国債を発行している、それは還元ではないと明確におっしゃっています。

 大臣も、先日の所信では還元という言葉を使っていませんでした。大臣は、今回のこのスキーム、還元というふうに考えているのかどうか、まずそこから確認させてください。

鈴木(俊)国務大臣 階先生の問題意識は、還元といっても、そうした還元する財源が何か今なお手元にあって、それを返すということになるのか、それが本来の意味の還元ではないか、こういうような御質問だと思いました。

 それで、このことについて申し上げますと、財政の構造といたしましては、過去の税収増、これはもう、当初予算でありますとか補正予算の編成を通じまして、主として政策的経費や国債の償還に既に充てられてきておりまして、仮に減税をしなかった場合と比べた場合には国債の発行額が増加することになる、こういうふうに認識をいたしております。

 そして、今回の減税における還元ということを言っているわけでありますが、その還元は、財源論ではなくて、税金を御負担いただいている国民にどのような配慮を行うかという観点で講じるものでございます。コロナ禍という苦しい期間における税収の増えた分を分かりやすく国民に税という形で直接戻すという考え方の下で、賃金上昇が物価高に追いつかず、収入の上昇を実感できなかった賃金労働者を始めとする国民の負担、これを緩和したいと考えているところでございます。

 そして、この減税の目的であるデフレからの脱却を確実なものとして、持続的な経済成長を実現し、財政健全化にもつなげることで、将来世代への責任というものも配慮していきたい、果たしていきたいと考えております。

階委員 今、還元という言葉を、日常用語からかけ離れたように解釈した上で還元ということを言われたわけですけれども、そうすると、この宮沢税調会長の発言、私は至極真っ当なことをおっしゃっていると思いますが、宮沢税調会長が還元ではないと言っているのは、政府の立場からすると間違いだということでいいですか。端的にお答えください。

鈴木(俊)国務大臣 宮沢税調会長の発言を直接聞いておりませんのでよくそこは分からないわけでありますが、先ほど申し上げましたとおりに、還元とこう申し上げるわけでございますけれども、しかし、税収の増えた分につきましては、政策経費でありますとか国債の償還などについて既に使っているわけでありますから、減税をするとなるとやはり国債の発行をしなければならないということにおいて、還元ではないとおっしゃったのではないかな、そういうふうに推察いたします。

階委員 今のおっしゃったことは、宮沢会長の御趣旨に沿ったお話だったと思います。

 そうすると、普通、還元というのは原資があってこその還元だと思うんですが、今回は原資がないけれども政府の言葉で言う還元をするということになりますが、そういう理解でよろしいですか。

鈴木(俊)国務大臣 先ほどの答弁の繰り返しになって恐縮でございますが、今般、還元ということを、減税における還元ということを言っているわけでありますが、これは財源論ではなくて、税金を御負担いただく国民の皆さんにどのような配慮を行うかという観点で行うものでございます。税という形で直接お戻しするという考え方、これが分かりやすいことである、そして、それを通じて国民の負担の緩和をしたいという考えの中で実施をしたいと考えております。

階委員 そうすると、さっきも大臣がおっしゃったように、総理の言う還元を行った結果、借金が増えるということはお認めになるということでいいですね。

鈴木(俊)国務大臣 減税をしないときに比べれば、国債の発行はその分必要となると考えております。

階委員 還元しても、借金が増えれば将来負担が回ってくるわけで、これが、国民は全く今回の減税と給付のスキームを評価しない理由だと思います。還元ではないんだったら、そもそもやれるはずもない、借金を増やすんだったら、やれるはずもないことをやろうとしているということを指摘させていただきます。また後ほど財務大臣にはお尋ねするとしまして。

 日銀総裁にも来ていただいております。

 今日お配りしている資料の一ページ目ですけれども、先週の金融政策決定会合の公表文の一部を、前回、九月の公表文と比較したものをつけさせていただいております。

 ここの中ではちょっと取り上げていないんですが、別な部分で、長期金利の上限を厳格に抑えることは副作用も大きくなり得るという表現が出てきます。副作用には円安による物価高も含まれるかどうか、この点だけ端的にお答えください。円安による物価高は含まれますか。

植田参考人 お答えします。

 私どもが申し上げている副作用と為替レートとの関係という御質問だと思いますけれども、私どもが副作用を抑えるというときに為替レートの関係で念頭に置いておりますのは、私どものYCCの運用がマーケットのボラティリティーを高め、それが為替レートのボラティリティーにもつながってしまう、そういう副作用を抑えることを念頭に置いているということでございます。

階委員 ボラティリティーというのは変動性なわけですけれども、変動性が上方にずっと変動してきて、今、昨年の初めに比べると、物すごい、三〇%も四〇%も円安になっているわけですね。これは副作用だということでいいですか。

植田参考人 常日頃申し上げておりますように、為替レートはファンダメンタルズに沿って安定的に推移するということが望ましいわけですが、そのファンダメンタルズに沿って安定的に推移するということが現実の為替レートの変化との相対でどこまでそうなのかということは、なかなか判断が難しいところでございますので、具体的に申し上げるのは差し控えさせていただければと思います。

階委員 いや、具体的に聞いていません。一般論として聞いています。急激な円安は副作用に含まれるかどうか、結論だけお答えください。

植田参考人 私どものYCCの運用がマーケットのボラティリティーを高めて、為替のボラティリティーも高まるという場合は、それは副作用に含めて考えているということでございます。

階委員 副作用に含めて考えられるということです。

 政府は昨年来ずっと物価高対策を行っているんですね。物価高対策を行うということは、急激な物価高が進んでいるからなんですけれども。

 物価の番人というふうに日銀は言われます。その立場からすると、物価高の大きな要因となってきた、今、副作用を生んでいるということもお認めになった、長期金利の上限を抑え込んでいるイールドカーブコントロール、これは日銀としては、副作用をなくすために事実上放棄せざるを得なくなったのではないかと思いますが、違いますか。

植田参考人 私ども、足下の物価高といいますか、高いインフレ率は、大まかに二つの要因で起こっているというふうに考えてございます。一つは、しばらく前までの輸入物価の上昇が国内物価に及んできているという動きでございます。もう一つは、国内で物価が少し上がり、賃金が上がり、それがまた物価に跳ねるという物価と賃金の循環、うまく回れば好循環でございますが、それが少しずつ起こってきているという部分でございます。

 私どもは、第二の部分がもう少しうまく回って、二%のインフレ率が持続的、安定的に達成されるということを目指してございます。この第二の部分がまだ少し弱いということを考えまして現在の緩和政策を維持しているというスタンスでございますし、イールドカーブコントロールも、その判断の下で、現状、維持しているところでございます。

階委員 第二の力が弱いから金融政策を維持しているというお話でしたけれども、今現在、仮にエネルギーの補助がなかりせば、物価は四%上昇なわけですよ。

 こうした現状に鑑みて、日銀としては、これから物価を上げたいのか下げたいのか、どっちなのかはっきり言ってください。

植田参考人 これは非常に難しいところでございます。

 エネルギー補助金がなかりせば四%前後である全体のインフレ率、これは下がっていくことが望ましいと考えております。しかし、中長期的な観点からは、先ほど申し上げたような第二の力によるインフレ率が少しずつ上がっていくことが望ましいというふうに考えており、その上で、第一の力によるインフレは、輸入物価も減少に転じていますし、ということから、早晩勢いが衰えてくるというふうに判断しております。その下で、第二の力の方を育てていくために金融緩和を維持しているということでございます。

階委員 要するに、将来物価を上げていかなくちゃいけないので、今は物価が幾ら高くとも我慢してくれ、今は本当だったら物価を下げるのが望ましいけれども、将来物価を上げていくために今は我慢してくれということを言っているんですか。あるいは、将来景気をよくしていくために今は我慢してくれ、物価高だけれども、日銀としてはそれには手を出さない、我慢してくれということでいいんですか。

植田参考人 非常に悩ましいところでございますが、足下の物価高が家計や企業に大きな負担を強いているということは重々承知してございます。ただ、申し上げましたように、これがすごく長く続くというふうには考えてございません。

 他方、第二の力的なものがすごい弱い、しばらく前まではゼロあるいはデフレ的な環境にあって、それが二十数年も続いたということによる様々なコストもあったかと思います。

 その両方を鑑みた上で、後半の第二の力の方を育てていこうという観点から、緩和を維持してございます。

階委員 明確にお答えになりませんけれども、今の金融政策を続けていくということは、将来はよくなるかもしれませんけれども、今は物価高につながるということを前提にしていますよね。それでいいですね。

植田参考人 第二の力の部分については、プラスの影響を金融緩和政策が与えるということをもちろん念頭に置いてございます。

 第一の力の部分については、いろいろあるとは思いますけれども、大まかには、近いうちに水準が下がってくるというふうに思っております。

階委員 三ページ目に日銀の物価見通しを出していますけれども、近いうちに下がってくるというのは昨年の春ぐらいからずっと言っていますよ。ずっと言って、その都度、三か月ごとに上方修正、上方修正、先週も上方修正。これって何なんでしょうか。国民にはもうすぐ下がるから我慢してくれと言っておいて、そして金融政策を漫然と続けていって、結局、物価高はどんどん進んでいく一方じゃないですか。

 日銀の誤った物価見通しとそれに基づく金融政策によって物価高が進む一方、そして、さっきも還元の話をしましたけれども、国はお金がないのに減税をやったり給付をやったりしなくちゃいけなくなっている。このことについて責任は感じないんでしょうか。

植田参考人 確かに、輸入物価、あるいはその元にあります国際商品市況自体は昨年の後半から下がる基調にございます。その下で、徐々に国内の物価、特に、先ほど来申し上げているような第一の力に関連する部分はインフレ率が下がってくるだろうという見通しを、ここずっと、先生がおっしゃるように出してきたわけでございますが、その部分について多少見通しが、その後上方修正を続けてきたということは事実でございます。

 どうしてそうなったかということを考えてみますと、輸入物価の国内物価への価格転嫁の率のところについて……(階委員「言い訳は聞いていません。それは聞いていないから。責任を感じないか。問いに答えてください」と呼ぶ)

 もちろん、上方修正につながったような見通しの誤りがあったということは認めざるを得ません。したがって、今後、いろいろなデータをきちんと分析して、見通しが適切に行われるように努めていきたいというふうに思います。

階委員 責任を感じているのであれば、直ちに検証すべきですよ、この物価見通し。私もこの場で前にも指摘していますけれども、毎回毎回なんですよ。その結果、物価高がどんどん続いていって、血税をどんどん物価高対策に投入しなくちゃいけなくなっている。責任を感じているんだったら、直ちに物価の見通しの在り方を検証して、そして、こうした、どうせ誤ってしまう見通しに基づいた金融政策を行っている、このこと自体も問題ではないか。

 二ページ目に門間さんという元理事のペーパー、資料をつけましたけれども、過去に日銀は経済、物価情勢の判断を基にして金融政策を行ったことはないと。アベノミクス以降の話ですけれども。要は、まともな見通しをしていないから、金融政策も変更できないわけですよ。まともな見通しをしていれば、もっと早くに今回のようなイールドカーブコントロールの事実上の放棄みたいなことも出てきたと思いますよ。

 だから、まともな見通しができないことについて責任を感じるんだったら、検証をして、そして、今後こういった見通しに基づいて政策決定していいのかどうか、これも含めて総括をすべきだと思いますけれども、いかがですか。

植田参考人 私ども、三か月に一回、将来の物価、経済見通しを点検し、発表するという作業をしてございますが、その際、毎回、できる限りにおいて、見通しが過去誤った場合には、それはどうしてかということのある種の検証作業を続けてございます。

 その上で申し上げれば、インフレ率全体の見通しを少しここのところ誤っているということは事実でございますが、先ほど来申し上げています、それを輸入物価の転嫁である第一の部分と、国内で賃金、物価が回るという第二の部分に分けた場合に、第二の部分がまだまだ弱い、少しずつ上がってきているけれどもまだ弱いという部分については、余り大きく外していないというふうに思っております。その部分に基づいて金融政策運営を行ってきたということについては、大きな誤りはなかったのではないかなというふうに考えております。

階委員 今回のこの決定文ですけれども、イールドカーブコントロールのところで、金融市場調節方針というのがこの一ページ目の最初の方に書いていますけれども、長期金利については、十年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行うとしている一方で、その実際の運用については、長期金利の上限は一・〇%をめどとするということで、一%超えも容認しているわけですね。これは矛盾していますよね。

 さっき言ったように、物価を上げるのか下げるのか、これも明確にお答えにならないし、こうした公表文においても、ゼロ%程度なのか一%超えなのか、これもよく分からない。こうしたどっちつかずの曖昧な態度を取り続けた結果が、今回、政策決定でイールドカーブコントロールを抜本的に見直したにもかかわらず円安が是正されなかったということにつながっているんじゃないですか。そこはお認めになりますか。

植田参考人 今回の政策、いわばイールドカーブ運営の柔軟化は、これまで長期金利について一・〇%を厳格な上限としてきたというところを、めどという、柔らかな上限ということに変えたということでございます。

 これは繰り返しになりますが、第二の力による物価が上がっていくという部分がまだまだ弱いという下で、イールドカーブコントロールを含めました現在の金融緩和を続けていこうという判断の下に行われた措置でございます。

階委員 確認しますよ。ゼロ%程度で推移するというイールドカーブコントロールの方針と、一%超えも容認するという実際の運用の見直し、これは矛盾しませんか。

植田参考人 全体として強い金融緩和を続けるという意味で、長期金利ゼロ%程度で推移するようにオペレーションを行うということでございます。ただし、その下で金利が変化するものですから、上限を設けようということで、上限を一%というふうに設定しているところでございます。七月との関係では、その上限を、非常に厳密なものから、めどというふうに、ややソフトなものに変えたというところが変更点でございます。

階委員 これもさっきの還元と同じく、一般人には理解し難い話なんですよね。ゼロ%で推移するという範囲に一%超えも含むというのは、どう考えてもおかしいでしょう。そういう言い方をするから、日銀が信用されなくなるわけですよ。幾らマーケットに働きかけて円安を是正したいと思ったとしても、それは功を奏さないわけですよ。そういうことをもう少し真摯に受け止めたらどうでしょうか。

 私は、もう潔く、イールドカーブコントロール、目標としては実質賃金が上がる形で二%達成だけれども、道半ばだけれども、円安、物価高が進んでいるから、これはもう長期金利のコントロールはやめます、それでいいんじゃないですか。そういうふうに正直に言うべきだと思いますよ。その方が物価という意味ではプラスに働いたと思うんですが。

 こういう分かりにくい、矛盾をはらんだ支離滅裂なメッセージの発信は、非常に私はマーケットを混乱させるし、また、日銀が意図した方向と反して物価高を進めているんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。

植田参考人 繰り返しになりますが、足下、まだ基調的な物価の上昇率が二%には少し距離があるという中で、大規模な金融緩和を続けてございます。

 イールドカーブコントロールは実質なくなってしまったのではないかという御意見かもしれませんが、そうではなくて、現在でも、定例のオペ、臨時オペを使ってかなり大量の国債を買い続けて、長期金利をある程度以上、現状では一%以上大きく上がらないようにするというオペレーションを続けてございます。

階委員 最後に、財務大臣に一問だけお聞きします。

 六ページ目に、過去二十年の予算編成時の前提となっている予算積算金利というものと実際の国債の表面利率の平均値、これを対比した表を挙げております。

 今、国債の発行金利は〇・九%ぐらいだと伺っておりますけれども、過去には、例えば平成二十四年度のところを見ていただくと、実際の利率が〇・八%のときに、予算の金利は二・〇%で計算していたというところがあります。しかし、このところ、日銀がゼロ%で長期金利を推移させるといったこともあり、ゼロ%を前提として一・一ぐらいの積算金利ということで、過去の水準に比べると、うんと低い状況で予算編成をしてきたという経緯があるわけですね。

 この一・一は、さすがに、今〇・九とかまでになっているわけだから、見直すべきだというか、見直さないと危ういのではないかと思いますが、最後、大臣にこの見解を伺います。

鈴木(俊)国務大臣 積算金利でございますが、来年度の予算編成に向けましては、長期金利が上昇している状況を踏まえつつ、財務省の担当部局からは、積算金利を一・五%として予算要求を行っております。具体的な利払い費については、これからの予算編成過程において引き続き議論を深めて決定していきたいと思っております。

階委員 一・五%が妥当なのかどうか、これもまた議論の余地があるところだと思いますが、今日はこの辺で終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

津島委員長 階猛君の質疑は終了いたしました。