平成23年2月1日 衆議院予算委員会

○石破委員 日本各地で多くの災害に見舞われた方々の御労苦に心から思いをいたし、政府におかれては、迅速、適切な対応をお願いしたい。私どもも全力を挙げてこれに当たってまいりたいと思っております。
 まず、石原幹事長から申しましたが、小沢さんの問題。
 総理、この話にそろそろ切りをつけませんか。総理は在職三十年、私も二十五年になります。その多くを、小沢さんなのか小沢さんではないのかということに費やしてきた。
 きのう、小沢さんが強制起訴を受けてのコメントは、国民の皆様、同志の皆様に御心配をかけていることをおわびする。おわびをするのは御心配をかけていることじゃないでしょう。
 ずっと、この長い間、本来我々は議論をすることがもっとほかにあったはずだ。そういう議論に我々は時間を費やすことではなくて、それは新進党であり、あるいは今の民主党もそうかもしれない、小沢さんなのか小沢さんじゃないのか、そのことに物すごく時間を費やしてきた。このことの国政の停滞、これに切りをつけないと、いつも申し上げているように、財政も経済も安全保障もすべて危機管理のモードに入っている、我々はそのことにすべてを費やして議論をし、総理がおっしゃるように熟議を尽くして結論を出す、それが我々が国民から与えられた責任だと思っています。
 私たちは、国会議員をやっていて本当にむなしくなったことがある。きょう一日きょう一日、また小沢、小沢じゃない、私はこういうことをやるために国会議員になったんじゃない、そういう思いを持ちました。
 小沢さんの理想が、例えば自己責任の原則の確立とか……(発言する者あり)静かにしなさい。原則の確立とか、あるいは政権交代可能な選挙制度の確立、それはそれなりに立派なこともあった。だけれども、今問題となっていることは何だろうか。
 例えば、強制起訴を受けて、素人が何がわかる、権力をもって白となったものが素人が集まって何がわかるんだということをおっしゃいましたね。この強制起訴を可能とする法律の改正に、小沢さんはそのときいたかいないか知らないけれども、民主党は賛成をしているんだ。国会議員として賛成しているんです。国民から負託を受けた者として賛成している。それを今ごろ何だ。素人が集まったものに何の意味がある、こんな不遜なことを言っていいのか。私はそうは思わない。
 検察審査会は単なる素人の集まりじゃないですよ。資料を提供されて、それを精査して、議論して議論して強制起訴という形にしたんじゃないですか。どうせ素人なんかにはわかりはせぬ、私はこの考え方が嫌いなんです。
 子ども手当を二万六千円まけば、戸別所得補償すれば、高速道路無料化すれば、高校無償化すれば、それはみんな一票入れるはずだ、財源がつくのかつかないのか、そんなことは関係ない、権力をとってから考えればいいという考え方だとすれば、私たちは絶対にそのような考え方に賛成しない。
 政治倫理綱領というのはだれがつくった。政治倫理綱領をつくったのは、あなた方は当選していなかったかもしれないけれども、それは議院運営委員長たる小沢さんでしょう。疑惑を持たれたときは、みずから進んでその解明に努めなければならない、それが政治倫理綱領でしょう。法廷の場では、法律に触れたか触れないか、それが問われている。しかし我々は、倫理、どうなのだと国民が素朴に思っていることにこたえるべきではないのか、そして、それは国会議員としての責務だと私は思っている。
 私たちの同僚、例えば竹下元総理にしても、私は自民党は完全無欠の政党だったなんて思っていませんよ。だけれども、多くの政治家、自由民主党の政治家が、政倫審にもあるいは証人喚問にも出ました。あるいは総理が先ほどおっしゃったように、田中角栄元総理に対して、中曽根総裁、自民党総裁としてですよ、自民党総裁として議員辞職を迫った。あるいは小泉総裁、中曽根議員に、宮沢議員に引退勧告をした。党のトップとはそういうものじゃないですか。
 総理はきのうも、岡田幹事長を中心としてということをおっしゃった。ですけれども、党のトップとして、もうこれ以上国政を停滞させない、熟議をしよう、結論を出そう、そのために小沢さんと。鳩山さんがそうであったように、政倫審は出ないと言ったらおしまいなんです。議決されても出なかったじゃないですか。だとするならば、残る手は証人喚問しかないではありませんか。それが、政治倫理綱領、これに従う道ではないのですか。
 民主党代表として、御党は代表と総理を分離されたとは聞いていない。自民党でいう総総分離なんかやられたとは聞いていない。総理、あなたは民主党代表であられる。代表として、この問題にけじめをつけるべく、幹事長に任せるのではなくて、証人喚問に出よということをなぜおっしゃれないのか。おっしゃれない理由があったら述べてください。
菅内閣総理大臣 石破議員も、長い政治経歴の中で、いろいろな立場でこの問題あるいは小沢元代表との問題にもかかわってこられたことは私もよく承知をしております。また、今言われた中でも、すべてとは言いませんが、共感を持ってお聞きする部分も多々あったことも率直に申し上げたいと思います。
 そういう中でいえば、私は、九月の、これは民主党の中の代表選挙ではありますけれども、その中で、クリーンでオープンな政治というものをその代表選挙の公約に掲げて、そして党員、サポーター、地方議員、国会議員の皆さんに御支持をいただいて代表に再選されました。その方針で、党の運営、そして国政の運営にもそれを軸にして当たっております。
 そういう意味で、私は、率直に申し上げて、それに反するような形の意見、意見はもちろんあっても構いませんけれども、それは民主党としての基本的な方針にはならない形に現在来ている。そういう意味で、小沢元代表の問題は、確かに、先ほども申し上げましたように、国会での説明は私は行われるべきだと思っております。
 しかし、そのことと、では小沢元代表が今の、例えば私の政権なり党運営について、もちろん、ある程度の影響がないと言えばうそになりますけれども、基本的なところでは、決して小沢さんによって、例えば二重権力とかなんとかということには全くなっておりませんので、そういう点では、私は、一遍に越えられたかどうかは別として、かなりのところ、この長い間の問題について一つの山を越えつつある、このような認識を持っております。
○石破委員 なぜ与党の方がここで手をたたくのか、私にはよくわからない。(発言する者あり)これが明快だとも思わない。
 私は、本当にこの問題にけりをつけなければ、この国会が動かなくなっちゃうと思うんです。総理はいろいろなことを議論されたいでしょう。私たちも議論したい。ですから、党内でできることは党内でやってください。我が党としてあれこれできる立場にない。代表として、政治倫理綱領のとおりに、証人喚問に出よと言えばそれで済むことです。ぜひそうしていただきたい。総理のお答えは結構です。
 私は、国会議員になる前に渡辺美智雄先生のお話を聞いたことがある。何とおっしゃったか。政治家とは何なのか、勇気と真心を持って真実を語るのが政治家だと教わったのです。選挙のために、これもただ、あれもただといって、有権者の喜ぶことばかり言って票をとるのは、それはお世辞家というのであって政治家ではない。何が本当なのかということを見きわめ……(発言する者あり)あなた方のことを言っているんじゃないですよ。何を勝手に失礼だとかなんとか言っているんですか。政治家というのはそういうものだと教わったということを申し上げている。
 何が本当なのかということを見きわめるのはそんなに簡単なことではありません。これから先議論しますが、TPPについても国論は完全に二つに割れている。国債の発行についても、格付についても、先ほど総理がおっしゃったことと我が党が言ったことは全く違う。この予算の正当性についても全く違う。何が本当なのかということを見きわめるのはそれだけ大変なことです。
 本当のことを仮に見きわめたとして、それが国民の耳に心地よいこととは限りません。消費税を上げる、だれも喜びません。憲法を改正する、そんなことはできない、そういう方も大勢いらっしゃる。だけれども、国民の耳にたとえ耳ざわりのよくないことであっても、それを語る勇気を我々は持つべきではないでしょうか。そして、それが自分だけわかっていればいいんだというひとりよがりじゃなくて、あの人の言うことだったら本当なんだろうな、そう思っていただく真心、きざな言葉で言えば、我が身の不徳を省みず言えば、真心を持たねばならぬのじゃないかというふうに思っております。
 私は、もう今から二十八年ぐらい前になりますか、渡辺先生のその講演を聞いて余りに感激して、そのテープをもらってきて、国会議員になるまでの間、二年近く、ほとんど毎日それを聞き続けた。自分がそうであるとは思わないが、そうありたいと思って努力をしてきました。ぜひ、総理、真実を語ってください。そして、それを語る勇気を持ち、わかってもらえる真心を総理は持っておられると思うんだ、それをぜひ発言していただきたい、そのように思っておるところであります。
 最近の総理のお言葉は、どうも、よくお考えになってのものではないのではないか、そう思われます。例えば、野党が税と社会保障の一体改革に応じないのは歴史に対する反逆行為だ、そうおっしゃった。参議院の本会議の質問に答えて、いやいや、それは特定の人を非難したのではないというふうにおっしゃいましたね。だけれども、野党がとおっしゃった。歴史に対する反逆行為という、これ以上ない強い言葉をお使いになった。これが非難でなくて何ですか。
 私たちは、揚げ足をとるつもりはないけれども、協議にはいつでも応じます。我が党は、昨年の参議院において、消費税を一〇%ということを掲げた。その使い道も示して、国民の皆様方から御投票をいただいた。それ以来、党内でずっと、野田税調会長を中心として、どういう制度であるべきか、日々議論を重ねている。少なくとも我が党は、消費税を五%上げさせていただく、それは社会福祉目的に使う。そして、財政健全化責任法案、これはもう一度修正をして出しますが、これも出している。私たちは、きちんと議論をし、案をまとめ、国民の皆様方から投票もいただいている。
 総理は、参議院選挙において、自民党の数字を参考にして消費税一〇%とおっしゃった。その後、あれはどうなりましたか。その後、党内でどのような議論がありましたか。協議を呼びかけるのであれば、まず民主党の案をまとめるのが先でしょう。
 自分の党の案がなくて、ばらまきと言おうが何と言おうが、私は、ばらまきの定義というのは、要は、政府に集まった金を家計に移転する、そのことだけではGDPは一円も上がらないですね。お金を移転するだけではGDPは一円も上がらない、経済の当たり前の話です。それを、総理がおっしゃったように、お金はあるだけでは意味がないのであって、使わなければ意味がない。六割が目的外で使われ、その多くが貯蓄に回っているとするならば、そのお金は生きていますか。つまり、恒久財源がないままに経済効果が十分発現されないもの、それをばらまきと私たちは言っているのです。言葉の定義はそういうものです。
 だとして、そういうものを全部残したままで、子ども手当は差し上げます、高校無償化です、高速道路ただの社会実験は続けます、戸別所得補償ですということはそのままにしておいて、さて、税も含めた一体改革は野党と議論しましょう、それはおかしくないですか。民主党の中でこうだという意見をまとめて、自由民主党はもうまとめています、そこから協議をするというのは当たり前の話じゃないんですか。まず、協議を呼びかけるからには、民主党の議論をまとめる、それが当然だと思うが、違いますか、お答えください。
菅内閣総理大臣 基本的には、私、石破さんが今言われたことを否定するつもりはありません。
 今、社会保障については、昨年の暮れに、基本的な考え方を五項目まとめました。その一つは、先ほども議論になりましたけれども、若い世代への支援を強化する全世代型対応の社会保障とすること、それから子ども・子育て支援を強化し、未来への投資としての社会保障とすること、そしてサービス給付を重視し、雇用創出効果を高めること、そして役所の縦割りを超えた包括的支援を行うこと、そして安定財源を確保し、次世代に負担を先送りしないこと、そういう考え方を昨年まとめました。
 そして、現在、政府と与党の間で、この問題の対策本部をつくりまして、与謝野さんに責任者になっていただいて、これから、四月に向けて、まず社会保障制度の改革の案をまとめ、そしてその後、六月をめどにして社会保障と税についての一体的な案をまとめていきたい。
 ただ、私たちが申し上げているのは、我が党、我が内閣としての段取りを決めてはおりますけれども、できれば、もっと早い段階からいろいろな意見を交換して、案づくりそのものの段階から与野党で議論ができないか、そういう認識で、御党に対してもできればそうした議論をしたいということを申し上げているところであります。
○石破委員 議論をするのは私は喜んで受けたいと思っています。その前に案をまとめてください。
 総理、この時間は総理の時間ではありません。私の時間でもありません。国民の時間なのです。国民から与えられたこの質問時間です。端的にお答えください、国民の時間なのですから。
 総理は、私が聞きましたのは……(発言する者あり)端的にしているでしょう。案をまとめますか、まとめませんかということを聞きました。まとめない、その案をつくる段階から自民党と協議をしたい、それが端的に言えばお答えですね。総理の後段の部分はそうだったでしょう。できれば案づくりの段階から野党も乗ってくれ、そのことを呼びかけている、端的に言えばそれが答えでしょう。違いますか、どこが違いますか。案づくりの段階から、つまり、民主党案というものはまだない、固まっていない、だから、案づくりの段階から野党も協議に参加するよう呼びかけている、違いますか。どこか違うんだったら言ってください。