平成27年5月7日衆議院憲法審査会(武正公一)

○武正委員 おはようございます。民主党武正公一でございます。
 本憲法審査会につきましては、与野党の合意形成を前提に、この十五年間、丁寧な議論を積み重ねてまいりました。その伝統にのっとって本憲法審査会が運営されるということが、過日、会長の発言でも確認をされたところでございます。
 ただ、その議論を進めるに当たりまして、二点、前提として確認を行う必要があると考えております。
 まず第一点は、立憲主義でございます。
 昨年七月一日、政府は、憲法解釈を変更し、集団的自衛権行使容認の閣議決定を行いまして、それを受けての安全保障法案の閣議決定が間もなく行われるとされております。四月末には、日米のガイドラインの見直しが行われ、米議会での総理の安保法案は夏までに成立という発言もあったところであります。
 こうした、立憲主義からいえば、一内閣が自分の内閣の都合のよいように恣意的に憲法解釈を変更することは、あらざるものと言わざるを得ません。立憲主義とは、専断的な権力を制限して、広く国民の権利を保障する思想とされてもおります。
 また、国民の義務、国の形を書いていったらどうかという話がありますが、各国の憲法を見た場合、特にG7などの諸国は少ないのが実情でございます。国民の義務を書いていない主要国、アメリカ、オーストラリア、フランス、カナダ。国の形については、アメリカでは奴隷制の廃止のみ、フランスでは国旗、国歌のみ。G7主要国の憲法前文もほとんど、こうした国民の義務、国の形の記載はございません。これが、立憲主義が持つ憲法のあるべき姿ではないでしょうか。
 また、海外の議会で安保法制の成立時期を明言することなど、憲法十三条二号、外交は内閣の専権事項ということがあるかもしれませんが、最終的決定権は国会に与えております。四十三条一項であります。
 昨年は、国会は三カ月も開かれないまま、海外の首脳への説明が優先され、そして、今回もまた同様でございます。
 こうした点などは、この憲法審査会で、まず立憲主義について各党の考え方を改めて確認して、議論を丁寧に進めていくべきと考えます。
 二つ目は、いわゆる押しつけ憲法論でございます。
 安倍総理は、昭和二十一年にGHQの憲法国際法も全く素人の人たちがたった八日間でつくり上げた代物だと発言をされています。
 既に、この憲法審査会の前身である憲法調査会では、二〇〇五年四月、最終報告書をまとめておりまして、「日本国憲法の制定に対する一連のGHQの関与を「押しつけ」と捉えて問題視する意見もあったが、その点ばかりを強調すべきではないとする意見が多く述べられた。」と。多く述べられたというのは、与野党で三分の二以上の議員が発言したことを指しております。
 こうした積み重ねのもと、この憲法審査会は、第一次安倍内閣強行採決のもと国民投票法が成立をしながら三つの宿題が延期になっていたものが昨年改正されたことは、与野党で議論を重ね、合意をして、それを積み重ねてきた成果があったものと考えますときに、いわゆる押しつけ憲法論について、各党の考え方もやはり確認して議論を進めていく、それをもって改正の理由とすることの是非ということをしておかなければならない。
 前提として、まずこの二点を申し上げたいと思います。
 憲法審査会で議論すべきこととして、民主党は、現に生じている社会問題として、現行憲法に足らざる点、補うべき点として明確になっているものから優先的に議論していくことを提案いたします。
 まず、昨年の衆議院選挙、過去最低の投票率を記録しました。
 いわゆる憲法七条による解散であります。六十九条解散は、戦後第一回目など、二十四回の解散のうち四回、あとは七条解散であります。慣行として、内閣の裁量権とされてまいりました。
 しかし、解散権は、衆議院で内閣の重要案件が否決され、審議未了になった場合などに限られるべきで、内閣の一方的な都合や党利党略で行われる解散は不当であるなど学説が述べられておりますし、保利茂衆議院議長も在任中のメモで、七条解散の濫用は許されるべきでないとしております。
 しかし、昨年の解散は、今のうち解散と言われ、解散権の濫用の疑いがあり、解散から公示までわずか十日間、小選挙区制度が導入され、期日前投票が始まって以来、最短であります。投票整理券が公示後七日目以降に届いた三十三団体、大阪市横浜市さいたま市など、政令指定都市の区がほとんどであります。過去三回と比べると、投票所は毎回減少し、三回前に比べ四千四百カ所減少、四万八千六百二十カ所。同じく、投票時間繰り上げは毎回増加をし、三回前に比べ四千百五カ所増加ということであります。国民の投票権利の確保が危うくなっているのではないのか。
 昭和二十七年六月十七日、日本での両院法規委員会では将来の課題としておりますこの解散権の問題、ドイツでは、基本法で建設的不信任制度など、議会の解散は制限され、一九四九年以降三回のみ、イギリスでは、二〇一一年に、任期五年間、議会任期固定法を成立させております。
 また、このたびの地方選、これも過去最低の投票率でありました。無投票の選挙区が多く、こうした点は、民主主義の根幹を揺るがすことにほかなりません。
 地方議会のあり方についても、地方議会のあり方に関する研究会の報告書などもまとめられております。こうした地方議会に関する記述、憲法にもございます。また、道州制を含めた地方分権地域主権については、政府がちょうど地方創生を進めているタイミングでもありますので、この憲法審査会の議論を深掘りする必要があろうかと思います。
 あわせて、憲法二十一条の報道のあり方も問われると思います。
 株式会社エム・データによると、前々回に比べ、在京六局の選挙期間中の選挙報道が約四割減ったとされております。昨年十一月二十日、自民党による在京テレビ局への申し入れ、選挙時期における報道の公平中立並びに公正の確保について、その後、十一月二十六日、「報道ステーション」、アベノミクスに関する報道への申し入れの影響ではないかとされております。
 また、衆議院選挙中に施行された特定秘密保護法、国民の知る権利の後退、プライバシー権を含め新しい人権のあり方は議論すべきであります。
 また、人権については、昨年来のヘイトスピーチへの対応、国際社会からも求められておりまして、早急な対応が必要であります。
 昨年、海外派遣調査で掲げた四つのテーマについて申し述べたいと思います。
 環境権については、国家、企業、家族などの協力が必要となる環境保全のような社会共通の課題に挑戦するため、国民の義務にかえて、共同の責務を民主党は提示しております。再生可能エネルギー対応も含め、議論の深掘りが必要と考えます。
 緊急事態については、基本的人権の制限への歯どめ、国会による民主的統制の確保を主張し、国家緊急権を憲法に明示して、非常時においても、国民主権基本的人権の尊重が侵されることなく、憲法秩序が維持されるよう、仕組みの明確化や首相の解散権の制限を唱えております。
 また、財政規律については、民主党政権時代、社会保障と税の一体改革関連法案を成立させた思いにもあらわれておりますが、一方、政府は夏に財政再建計画を発表するとされておりますが、二〇二〇年プライマリーバランスという国際公約以上のものには、国と地方をあわせた取り組みなど、腰が引けていると言わざるを得ず、憲法または別の法律の何らかの手当てが必要ではないかと考えます。
 また、十八歳選挙権引き下げ法案の実現に向けて、高校での憲法、政治、歴史教育の充実、昨年成立した国民投票法改正案附帯決議にありますが、平成二十三年十二月に総務省がまとめた最終報告書で位置づけた主権者教育の充実が欠かせないと考え、成年年齢の引き下げも含めた議論が必要と思います。
 また、一般的国民投票についての議論もあわせて行うことは、八党会派で合意した点でございます。