平成26年5月15日の安倍内閣総理大臣会見

昨年からの安全保障法制の問題は「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書が安倍総理に提出された平成26年5月15日に行った記者会見から具体的に見えてくることになった。この時点では具体的な法案ができていなかったために「集団的自衛権」を使わないとこういうことができないのはおかしいじゃないかという程度の論理しか示されず、のちに問題となる「存立危機事態」「重要影響事態」という概念はなかったので現在の議論からすると非常に穴のある話だったがあくまで「邦人保護」のためというお題目があったため一部の専門家以外の反発は大きくなかったように記憶している。


 今や海外に住む日本人は150万人、さらに年間1,800万人の日本人が海外に出かけていく時代です。その場所で突然紛争が起こることも考えられます。そこから逃げようとする日本人を、同盟国であり、能力を有する米国が救助、輸送しているとき、日本近海で攻撃があるかもしれない。このような場合でも日本自身が攻撃を受けていなければ、日本人が乗っているこの米国の船を日本の自衛隊は守ることができない、これが憲法の現在の解釈です。
紛争地から避難してくる邦人を救助して乗せている米艦を日本の自衛隊が守ることができないというパネルが示されていた。非常にわかりやすい例でこのあとも繰り返し用いられ安全保障法制のシンボル的な取り扱いをされていた。日本の自衛隊は米艦を守ることができない理由としては、日本の自衛隊武力行使三要件をみたした時だけで、しかも国土を守るための「必要最低限」の行使ということで領土領海内に限られるというのが憲法9条から導かれる見解であったからである。
しかし実際に国会審議の中で議論をしているうちに、今回の安保法制でも邦人の乗った米艦を無条件に警護することは単純にできるわけでなく、「存立危機事態」あるいは「重要影響事態」という日本の国土に危機がある時、あるいは攻撃がある時に限られるということ、すなわち邦人の乗った米艦に危機が迫ってもただそれだけでは自衛隊は事実上何もできないということが明らかになっている。これはあくまで自衛隊武力行使は日本の国土を守るためという憲法上の要請は変わらないからである。

現在、アジアで、アフリカで、たくさんの若者たちがボランティアなどの形で地域の平和や発展のために活動をしています。この若者のように医療活動に従事をしている人たちもいますし、近くで協力してPKO活動をしている国連のPKO要員もいると思います。しかし、彼らが突然武装集団に襲われたとしても、この地域やこの国において活動している日本の自衛隊は彼らを救うことができません。一緒に平和構築のために汗を流している、自衛隊とともに汗を流している他国の部隊から救助してもらいたいと連絡を受けても、日本の自衛隊は彼らを見捨てるしかないのです。これが現実なのです。

これはいわゆる「駆けつけ警護」に当たるものであるが、これも「邦人保護」という点で国民への理解を訴える事例として用いられた。しかし他国の領土での紛争については一次的にはその領域を治めている国に警察権や治安維持権があるので、そう簡単な問題ではない。法案でどうなっているかは国会でこの点はほとんど議論されていないのであまり把握できていない。調べておかないと。

 もう一つの考え方は、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき、限定的に集団的自衛権を行使することは許されるとの考え方です。生命、自由、幸福追求に対する国民の権利を政府は最大限尊重しなければならない。憲法前文、そして憲法13条の趣旨を踏まえれば、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることは禁じられていない。そのための必要最小限度の武力の行使は許容される、こうした従来の政府の基本的な立場を踏まえた考え方です。政府としてはこの考え方について、今後さらに研究を進めていきたいと思います。

ここで出てくるのが「限定的な集団的自衛権」という言葉で、あくまで自衛のために集団的自衛権を行使するということで政府側は「限定的な」という言葉を使っている。一般的な集団的自衛権は自国のためでなく他国の防衛に助太刀をすることであって自国防衛とは異なる話であるので、今年になって提出された法案ではいろんな矛盾が生じることになった。