安保法制における存立危機事態 (2)

存立危機事態においてはまた事態対処法において以下のように規定される。

(武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処に関する基本理念)
第三条 武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処においては、国 、地方公共団体及び指定公共機関が、国民の協力を得つつ、相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければならない。
(略)
4 存立危機事態においては、存立危機武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。ただし、存立危機武力攻撃を排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。
(略)
(国の責務)
第四条 国は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため、武力攻撃事態等及び存立危機事態において、我が国を防衛し、国土並びに国民の生命、身体及び財産を保護する固有の使命を有することから、前条の基本理念にのっとり、組織及び機能の全てを挙げて、武力攻撃事態等及び存立危機事態に対処するとともに、国全体として万全の措置が講じられるようにする責務を有する。

というように既存の武力攻撃事態に合わせて存立危機事態でも武力行使ができることになっているとともに、存立危機事態を排除することが国の責務となっている。しかしこれまでの安全保障政策において自衛隊武力行使については日本の領土領海での活動を前提にした装備しか持っていない。たとえば米艦にミサイル攻撃があって次に日本が狙われる蓋然性が高ければ「存立危機事態」が成立することは考えられるが、敵のミサイル基地を攻撃するだけの装備は持っていないのでその時にミサイル攻撃を排除することはできない。ミサイルが飛んで来れば日本への武力攻撃がなされて武力攻撃事態が成立するので迎撃できるが、我が国への攻撃がなされていない状況では手が出せないという矛盾した状況が存立危機事態では生じうる。
今回の安保法制は本来は他の国への助太刀である「集団的自衛権」を自衛のための「限定された集団的自衛権」として取り入れようとしたために、武力の行使を今までより狭く解釈するとか兵站を「後方支援」と称して「武力の一体化」とみなされることを避けたためにさまざまな矛盾が生じてしまっている欠陥法案でしかない。
そもそもイラク特措法人道支援活動としてサマワ自衛隊派遣をしたことが合憲だったのかどうか。衆議院での審議の中で共産党サマワに携行した武器を明らかにしたこと、また結局は委員会審議のあとで明らかになったがサマワでの活動報告書でかなり危険な状況が発生したことなどをきちんと総括しないまま自衛隊の活動をさらに広げようとしてることが大きな問題である。