児童ポルノ単純所持の規制について

前回のエントリも結局書き終わってないままにid:usankusaさんの新しいエントリが出ている。

被写体は単純所持を知りえない(手売りでもさせられていれば別だが)から、単純所持は児童ポルノ法の保護法益に照らして問題ない、と私は考えるが、いかがだろうか。

http://d.hatena.ne.jp/usankusa/20080530/1212167695

私も視聴することで人権侵害が続いているという論理で児童ポルノの単純所持を規制するのには違和感を感じます。
たとえば猥褻物については定義は曖昧なままですが、明らかに猥褻物とされるものがあります。たとえばモザイク無しのAVなどがそうです。モザイク入りで猥褻物にならないというのは私は不思議に思いますが、それは別問題なのでここではおいておきます。猥褻AVは頒布が禁止されているはずですが実際にはいたるところで手に入ります。もちろん今回問題となる18歳未満ではなく成人がきちんと契約をしたものを取り上げます。しかしもしその契約があくまで合法のAVに出演するというもので、モザイク無しのものが「流出」したとしたら出演者は何らかの権利が侵害されています。なにか法的手段をとれば頒布は止められるかもしれません。でもすでに出回ったものはどうなりますか。回収は不可能ですし今もどこかで誰かが観てるかも知れません。もしid:hagakurekakugoさんの論理を敷延して視聴が彼女の権利を侵害しているものならば、彼女の権利は侵害され続けていることになります。彼女の権利はどうやったら回復されるのでしょうか。え、AVなんて出るのがいけないって、それはそうです。ただいくら成人でも契約外のことまで甘んじて受けることは本来あってはならないでしょう。
何年か前にある国会議員の娘が自分のことを週刊誌に書かれてプライバシーを侵害されたということで裁判所に発行差し止めの仮処分を求めました。仮処分はおりましたが、あくまでその時点から販売できなくなっただけですでに販売されたものは回収されませんでした。最終的に仮処分は取り消されましたが、もし発行停止となってもすべて回収はできないでしょう。発行停止になったものについて個人間の授受が禁止されるのかどうかわかりませんが、どちらにしても記事が読まれるたびに当人の権利が侵害されていると考えるのはちょっと無理があります。もちろん週刊誌の書き逃げが有利、あるいは公人か私人かの判断の難しさなどの問題がありますが、すでに所持しているものからそれを取り上げるのは相当の根拠が無いと難しいでしょう。
もちろん児童の人権を守るのは大事ですが、単純所持を禁止して社会生活を萎縮させる可能性を越えるだけのの便益があるんでしょうか。